在宅での「看取る医療」の大切さ 医療法人「優和会」理事長 松永平太
松永)いまも私は看取っていますけれど、ほとんどが老衰です。自然の流れ、老いて枯れて、木の葉のように散っていく。死に向かって無理な痛みを取る、家族と合わせるなど、穏やかな死への医療が復活しているのかなと思っています。 黒木)そういうお医者さんは多いのですか? 松永)病院は命を助けるところであり、在宅はどちらかと言うと死へ向かう、看取る医療ですので、文化が少し違うのです。 黒木)幸福度の高い国の医療を実践されているわけですよね。 松永)自分なりの結論を持っていますが、単に「昼間と夜の部屋を分けよう」という考え方です。つまり昼間はベッドに行かず、居間のソファで寝てもらう。たったそれだけです。例えば新幹線を使ってどこかの温泉に行き、宿に着くと女将がよく「さぞかしお疲れになったでしょう」と言います。「新幹線でずっと寝ていたよ」と思っても、その夜はぐっすり眠れるのですよ。なぜならば、座って寝ていると姿勢が崩れるので、元に戻そうとするため、やはり体は寝ていないのです。寝ているようで寝ていない。だから弱らない。ところが(ベッドで)寝ると、体も頭も寝てしまうので、どんどん弱くなります。だから「昼間はベッドに行ったらダメですよ」と言っています。 黒木)ということは、やはり自宅がいいのですね。 松永)自宅でゴソゴソと。でも見ていると、皆さんゴロゴロなのですよ。 黒木)しかし、それは家族の協力がないと大変ですよね。 松永)いま独居の高齢者がどんどん増えていますが、笑顔で生きている人もいます。家族がいなくても、1人でも自分が望むところで生きていけるような社会をつくる必要があると思っています。
松永平太(まつなが・へいた)/医療法人「優和会」理事長 ■1992年、東京医科歯科大学を卒業後、民間病院へ入職。地域医療、看護ケアの大切さ、命を支えるケアを学ぶ。 ■父親が倒れたことにより、1997年に父の診療所「松永医院」を継承。 ■2000年、介護保健制度施行に合わせ「有限会社ハイピース」にて、訪問看護のための介護ステーション「そよかぜ」創設。2001年、医療法人社団「優和会」創設。 ■以降、デイサービスセンター「あそぼ」を設立。社会福祉法人「おかげさま」創設。老人保健施設「夢くらぶ」、「夢ほーむ」、認知症対応型デイサービス「おかげさま」創設。 ■2023年、看護小規模多機能「にこにこ」創設。 ■2024年には、地域包括支援センターを創設予定。 ■医療・介護・福祉を通じて社会貢献することを使命とし、「“いのち”を助け、“いのち”を元気にし、“いのち”を輝かせる」ことを経営理念として掲げる。いまの命を助けるのは医療者として当たり前であると考え、「患者の未来の笑顔を守ること」を使命とし、多職種協働を図っている。