【連載】言の葉クローバー/サイトウタクヤ(w.o.d.)人生の指針となっている『星の王子さま』
心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。昨年、「STARS」というシングルをリリースしたw.o.d.のサイトウが、世界中で有名な星にまつわるあの作品を紹介してくれました。その中でも彼が学生の頃から〈大切〉にしている言葉とは。
----------------------------------- いちばんたいせつなことは、目に見えない 小説『星の王子さま』 -----------------------------------
迷った時にはこの言葉をよく思い出します
最初に読んだのは、たぶん子供の頃やと思うんですけど全然覚えてなくて。意識的に読んだのは大学生の頃ですね。大学の雰囲気が苦手であんまり真面目に通ってなくて、最寄り駅まで行っては、駅前の本屋でよく暇をつぶしてたんです。そこで、そういえば昔読んでたな~、ってなんとなく手に取ってみたら、グサッと刺さって。 ポイントは大人が書く少年性と純粋さ。子供の頃は無邪気だったのに、大人になって複雑なことを考えたり、いろんなことに巻き込まれたりして、原点とか初期衝動みたいなところを忘れて、物事が形骸化していっちゃう。なんで日々過ごしてるのかもわからへんし、今やってることがそもそも自分の本当にやりたいことやったのかどうかもわからなくなってしまうことがあって。サン=テグジュペリ自身も大人になってしまったけど、だから気付けた人間や愛の本質を、王子様に投影して書いてるものかなと思うんですよ。そういうスタイルの哲学書ですよね、これは。 今思えば、大学生の頃ってみんな就職活動をしてるのに、俺は何もしてなくて(笑)。なんかしらの形で音楽はやるつもりやったけど、単位も取れてないし、これでいいのか?みたいな不安もどっかにあって。ある種の救いを求めてたのかもしれないですね。そこで「いちばんたいせつなことは、目に見えない」っていう言葉を読んだ時に、ズキューンと刺さって、本質を考えるきっかけを与えてもらったんだと思います。 今でも迷った時、うまく行ってない時にはこの言葉をよく思い出します。今、自分がやってることの理由を思い出して、初心に帰る。目に見えるものだけに囚われないで、大切にしたいことってなんやったっけ、解決した先に何があればいいんやろうって考えていくと、自ずと方向性が見えてくる。そこで選んだものが必ず正解かどうかはわかんないけど、自分やみんながハッピーになれるような選択をするための指針に、この言葉がなってますね。 なにかにハマるととことん調べたりするタイプで、『星の王子さま』もいろんな翻訳版を買ってみたり、解説本を読んでみたり、サン=テグジュペリについて書いてる本も見たりしましたね。いろんなところで『星の王子さま』の名前を出してるから、他の作品にしたほうがいいかなって一瞬考えたんですけど、それだと嘘になっちゃう気がして、やっぱりこの作品にさせてもらいました。それこそ、〈俺のいちばんたいせつなもの〉なんで。 作詞や作曲にもめちゃくちゃ影響を受けてると思います。空とか星とかをモチーフにした曲もいっぱいありますし、今後もそういう曲はいっぱい生まれてくると思いますよ(笑)。 『星の王子さま』 著者:サン=テグジュペリ 砂漠に不時着した飛行機のパイロットが出会った男の子。それは、遠く小さな星をあとにして、いくつもの星を巡り、七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった――。孤独な飛行士と、〈ほんとうのこと〉しか知りたがらない純粋な星の王子さまとのふれあいを描く、永遠の名作。世界中の言葉に訳され、70年以上にわたって愛されている。