医療的ケア児の処置手順書を公開 岡山大教授ら、受け入れ環境改善を
人工呼吸器や胃ろうなどを使い、たん吸引などが日常的に必要な子どもたちへの医療的ケアについて、岡山県内で指標となる手順集ができた。岡山大教授らが作成し、10月下旬からウェブ上で公開されている。医療や福祉、教育現場で活用してもらい、「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたちの受け入れ環境の改善や保護者の負担軽減につなげたい考えだ。 【写真】医療的ケア児の処置手順集の表紙 手順集は、岡山大小児急性疾患学講座の鷲尾洋介教授が県医療的ケア児支援センター(岡山市北区)や県内の基幹病院の医師、看護師らの協力を得て完成させた。支援センターのホームページ(https://www.okayama-icare.com/)にアップしている。 計39ページからなり、口腔(こうくう)・鼻腔(びくう)や気管からのたん吸引、胃管の挿入方法や栄養注入といった医療的な処置や手順を、写真を交え項目ごとに紹介している。注意点やトラブル時の対応も書かれている。 医療的ケア児には、歩行可能な子どももいれば、自らの意思で体を動かすのが難しい子どももいて身体の状態は様々だ。重症心身障害児もいる。 消毒の処置をする場合でも、病院や福祉施設、家庭などによって、手順が微妙に異なることがあり、手順の標準化を求めるニーズがあった。 昨年、県医療的ケア児支援センターなどが実施した調査によると、県内に居住する医療的ケア児は0~19歳の計318人。今年3月に公表された保護者へのアンケート結果では、子どもの主な看護・介護者の83.2%が「疲れを感じている」と回答。「就労したいができない」と答えた割合も半数を超えた。困りごとを問う項目では「福祉サービス」をあげる保護者が最も多く、利用施設の拡大を求める声があがっていた。 鷲尾教授によると、保護者は子どもを施設に預けたくても、処置の方法が自分の子に沿ったものでなければ安心できず、施設の利用をためらってしまうという。結果的に保護者が休める時間が減り、負担がのしかかる状況が生じている。 県内全域で指標となる処置の手順集があることによって、福祉サービス事業者の新規参入や保護者のサービス利用の増加が期待でき、医療的ケア児を受け入れる幅が広がる可能性がある。 鷲尾教授は「小児在宅医療は、障害や病気がある子どもが、ひとりの人間として家族や地域のつながりのもと、充実した生活ができることが大切。手順集がその一助になれば」と話す。 今後は医療機関への配布や研修会の開催も検討しており、手順集をさらに普及していきたい考えだ。(北村浩貴)
朝日新聞社