秋ドラマで最も株を上げた女優は? 最高の演技で魅せる宝石(1)憎々しい芝居が最高…犯罪者役で本格ブレイク
2024年の秋ドラマも豊作だ。趣向を凝らした物語もさることながら、実力派俳優たちによる演技合戦も熱い。中でも若手女優の活躍は目覚ましく、世間にインパクトを残した。そこで今回は、今季のドラマで最も株を上げた女優を5人ピックアップして、その魅力を解説する。第1回。(文・平良真咲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
森田想『3000万』(NHK総合)
NHKが新たに立ち上げた“脚本開発チーム”WDRプロジェクトから生まれた土曜ドラマ『3000万』。ささいなきっかけから広域犯罪事件の犯罪組織に関わっていくこととなる家族を描いたドラマは、スリリングな展開と決して他人事とは思えぬ生々しさから注目を集めた。 主演の安達祐実は言わずもがなだが、本作で存在感を発揮していたのが、犯罪組織の1人・ソラを演じた森田想だろう。 安達演じる祐子が運転する自家用車と、バイクに乗ったソラがあわや接触事故を起こしかけたことから物語ははじまる。最終的にソラは祐子の家に居候するまでになるのだが、祐子の弱みを握ったソラの態度のふてぶてしさったらない。 パートを休んでまでソラの世話をする祐子に何度も買い物を頼んだり、出された料理が冷凍食品だったことで「料理下手なの? 息子が可哀想」と言ってみたり、やりたい放題だ。投げ捨てるような声色、ちょっとだけ眉間にシワの寄った表情まで含めて、完璧なふてぶてしさ。 祐子に対しては強気な一方で、犯罪組織からも警察からも追われている状況は、やはりソラとしても心細いものらしい。辛くも追っての手を逃れ、裸足に入院着のままで震えながら煙草に火をつける。その様子がなんともいじらしいのだった。 後に明かされるソラが犯罪に手を染めた理由なども相まって、彼女が思っている以上に“普通の人”だったかもしれないことが浮かび上がってくる。普通だったはずの人間の、虚勢ゆえのふてぶてしさを巧みに表現していた。 (文・平良真咲)
平良真咲