日銀追加利上げと量的引き締めはどちらが先か?
日本銀行は環境次第で柔軟に長期国債買い入れ額を増減させる
3月19日の金融政策決定会合で、日本銀行がマイナス金利政策を解除した際に、長期国債の買い入れに大きく左右されるマネタリーベースの増加を維持する「オーバーシュート型コミットメント」を終了したと宣言された。日本銀行は状況次第で、長期国債の買い入れ額を減らして、長期国債の保有残高およびマネタリーベースを減少させることができるようになったのである。 しかし他方で、同日の対外公表文では、「長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する」としている。 このように日本銀行は、長期国債の買い入れ額を増減双方向に柔軟に変化させるのが現状の方針ではないか。10年国債利回りがさらに上昇を続け、1.1%~1.2%などとなれば、長期国債の買いれ額を再び増加させ、利回りの上昇を抑えることが予想されるところだ。
「量的引き締め(QT)」は追加利上げの後か
このように足もとでの日本銀行の長期国債の買い入れ減額措置は、本格的な「量的引き締め(QT)」に繋がる動きではなく、柔軟な買い入れ方針のもとでの買い入れ額増減の一端とみるべきではないか。 日本銀行は、短期金利を引き上げている最中に本格的に「量的引き締め(QT)」を始めることには慎重だと思われる。双方を同時に行えば、長期国債利回りが予想できない形で大きく変動してしまうリスクがあるからだ。 日本銀行は、賃上げの動向とそれが物価に与える影響を統計で確認した後、最短で今年9月に追加利上げに踏み切ると予想する。本格的な保有国債の残高削減、つまり「量的引き締め(QT)」に踏み切るのは、来年に、追加利上げが一巡した後になるのではないか。 こうした見方が今後広がれば、長期国債利回りはひとまず落ち着きを取り戻すだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英