上杉柊平はいま最も勢いのある俳優だ “クールなだけではない”絶妙さが魅力に
大企業・九条開発のお抱え介護士として働いていたシングルマザー・今井夏(松雪泰子)を、九条開発の女社長にする。そんな大それたゴールを掲げてトータルコーディネータをスタートさせた『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)の密子(福原遥)。様々な謎が解けたり増えたりしながら、ついに迎えた社長選。そこでこれまでとは違う演技を見せていたのが、遥人を演じる上杉柊平である。 【写真】“クールなだけではない”絶妙さ 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系/以下、『18/40』)で深田恭子演じる成瀬瞳子と恋に落ちる10歳以上年下の男性・加瀬息吹役を演じ話題を集めた上杉。俳優活動を始めたのは2015年からと同世代の俳優たちと比べるとやや遅めだが、現在6クール続けて連続ドラマにレギュラー出演中。今最も勢いに乗っている俳優と言っても過言ではないだろう。上杉が演じる役柄は、本作『マル秘の密子さん』の遥人を含め、クールであることが多い。だが、必ずクールなだけじゃない魅力がある。彼の何が視聴者を惹きつけるのだろうか。これまでの出演作で演じた役柄とともに振り返ってみたい。 ■“隙”がある不器用さ 『18/40』での加瀬と瞳子との出会いは運命的。ひったくりにあった瞳子のかばんをその場に居合わせた加瀬が取り戻したのだ。犯人を追いかけている時の加瀬の表情は鬼気迫っていて、鋭い目つき、口に蓄えられたひげも相まって怖かった。瞳子は元々の性格なのか明らかにこちらの方が年上という余裕からなのか、そんな加瀬にバッティングセンターの場所を聞くという不思議さを見せたが、その後、私たちは加瀬の魅力を知ることになる。加瀬は基本的に口数が少ない。そういう人には近寄りがたい雰囲気があることが多いが、加瀬にはなんだか“隙”があるのだ。たまに出てくる言葉は優しく、嬉しければちょっと微笑む。どうやら少し引っ込み思案なだけで人には興味がありそう。クールに見えるのは、どうしたらいいかわからずに右往左往している不器用さがあるからなのである。 ■“何かを隠していそう”なミステリアスさ 『となりのナースエイド』(日本テレビ系)で、上杉は主人公・澪(川栄李奈)の姉・唯(成海璃子)の恋人で刑事をしている橘を演じた。この橘もやっぱり口数が少なく、あまり喜怒哀楽も激しくないのでクールに見えるが、実際は自殺したといわれている唯が、誰かに殺されたのではないかと疑い、刑事という立場を存分に利用してその背景を調べている。クレバーだが猪突猛進型でもあり、病院での勤務を終えた澪のところに突如やってきて、驚かせることもしばしばだった。つまり、橘は冷静を装ってクールに見せているタイプ。その内面には情熱を秘めている。“何かを隠していそう”なミステリアスな雰囲気は、橘にとっては“怖い刑事”の印象に繋がる。もしかしたら橘はそこまでわかっていたのかもしれない。 ■垣間見える“ポンコツ”さ 『マル秘の密子さん』の遥人は、命の危険に晒された密子を見つけ、衝動的な思いを抑えることができず、彼女を間一髪で救った。彼女の敵のふりをしきれないのは、“隙”がある不器用さがあるからだ。さらに密子は、“何かを隠していそう”なミステリアスさを感じるからずっと遥人への疑いを捨てられない。その上で、これまでの上杉にはあまり見られなかった、遥人の魅力に繋がっているものを挙げるとするならば、不器用さやミステリアスさを隠しきれない“ポンコツ”さが垣間見えてしまうところではないだろうか。クールすぎない、クレバーすぎない表情を見せている上杉の演技は新鮮で、かつ、それが遥人の人間味や感情の揺れ動きを表現することにも繋がっている。 これまで次期社長として失敗をしたことなどなく、エリート街道を突き進んできた遥人。だがそれは、“そう思っていた”だけで実際は母・美樹(渡辺真起子)の裏工作が大きな力を発揮していたということがわかってきた。母のやってきたことが明らかになった以上、遥人もそれに甘えてばかりはいられないだろう。ここから遥人がどんな姿を見せてくれるのかに期待したい。
久保田ひかる