中国によるデフレの輸出を警戒する米国
米中首脳会談下で米中経済は対照的な状況に
15日にサンフランシスコ近郊で開かれた米中首脳会談では、両国間の友好ムードが演出された。偶発的な軍事衝突を防ぐ関係安定に向け、前進もみられた。しかしそうした友好ムードも、その後バイデン米大統領が習近平国家主席を「独裁者」と呼んだことで水を差されてしまった感もある。さらに、台湾問題を巡る両国の立場の違いは全く縮まらなかった。 米国経済は今年7-9月期に年率+4.9%の高成長を記録する一方、足もとでは物価上昇率の低下が改めて確認されるなど、経済の現状と先行きに比較的楽観的な見方が多い状況だ。それとは対照的に中国では、不動産部門の苦境が一段と明らかになっている。中国国家統計局が16日に発表した10月の住宅販売動向で、主要70都市の8割に当たる56都市で新築物件価格が下落した。値下がりは前月から2都市増え今年最多を更新している。 国内経済が低迷する中、中国としては、米国やその他先進国による先端半導体、半導体製造装置の対中輸出規制を見直すことを求めているが、米中首脳会談では、この分野で進展はなかったとみられる。
中国は国内で余剰となった製品を安価で海外への輸出に振り向ける
中国経済の苦境は、米国にとっても懸念材料となってきた。それは米国経済、世界経済にとってもリスクであるからだ。10月の中国の消費者物価は前年同月比---0.2%となった。不動産価格の下落と物価の下落が重なる「ダブルデフレ」の様相となっている。物価下落の背景にあるのが、需給の悪化である。不動産不況が住宅や消費といった需要を減退させている面がある。他方で供給力が過剰となっていることが、物価下落の背景にあるだろう。 海外からは、政府が社会保障制度改革を通じた将来不安の軽減や給付などによる個人消費刺激策を中国政府に呼びかける声が増えているが、中国政府はそうした国内消費の刺激策には慎重である。それよりも米国への対抗を強く意識して、国内での半導体生産拡大など供給力を一段の高める政策に注力しているのである。こうした中国政府の経済政策も、国内での供給過剰とデフレ傾向を後押ししている面があるだろう。 米国やその他の国々にとっての懸念は、中国が、国内で余剰となった製品を安価で海外への輸出に振り向けることだ。これは、国内のデフレを海外に輸出することを意味する。人民元は対ドルで15年以上ぶりの安値圏にあるため、海外市場で中国製品の安値攻勢をかけることがやりやすい環境ともなっているのである。それによって海外企業にとっては、中国製品に市場を奪われることになる。