明豊、背番号3の「4番捕手」が劇的サヨナラ打「自分が一番目立つんだという気持ちでやっていきます」【選抜高校野球】
◆第96回選抜高校野球大会1回戦 明豊1―0敦賀気比(19日・甲子園球場) 明豊の執念が相手を上回った。0―0で迎えた9回裏、2死一、二塁。4番石田智能(3年)が振り抜いた強い打球が二塁手のグラブをはじき右翼前へ抜けると、俊足の二塁走者、木村留偉(3年)がトップスピードで本塁を駆け抜けた。2死から土壇場のサヨナラ勝ちで甲子園での春夏通算20勝目を刻んだ。「自分が4番を打たせてもらっているのでここで決めてやるという強い気持ちで打ちました。長打を狙いたくなるんですけど、野手の間を抜けば木村は足が速いので絶対に帰って来れると思った」。石田は狙い通りの強い打球で勝利を引き寄せた。 ■初出場熊本国府が初戦突破!明豊も難敵撃破【選抜組み合わせと結果】 先発の2年生左腕寺本悠真とエース野田皇志(3年)の粘り強い力投で0―0のまま最終回を迎えた。打線は5回以外毎回走者を出しながら決定打が出ず8回まで11残塁と、もどかしい攻撃が続いた。9回は1死から1番の木村が中前打で出塁。2番高木真心(3年)も四球で俊足コンビが出塁し4番石田が決めるという理想的な攻撃となった。「木村、高木、石田がそれぞれの良さを出してくれた。タイブレークも頭をよぎりましたが、9回で決着をつけたかった」と川崎絢平監督は期待に応えた選手の粘りをたたえた。 昨夏の悔しさを払しょくする勝利だった。昨夏の甲子園は1回戦で北海(北海道)にリードしながら9回裏に追いつかれ、タイブレークとなった延長10回に9―10のサヨナラ負け。6番で出場していた石田は「去年の甲子園はタイブレークで負けたので絶対に決めたかった」と執念の一打で昨夏の悪夢をうち破った。 守備では背番号3を背負いながらこの春から捕手として投手陣を引っ張る。この日は先発の2年生左腕寺本悠真とリリーフのエース野田皇志(3年)をリードして無失点リレーを支えた。1年のときは捕手だったが、その後は野手としてレギュラー入りし昨秋は左翼で出場。昨秋の九州大会後、石田の将来を見据えた川崎監督から「捕手をやらないか」と言われ再び捕手の練習を始めた。「最初はピンとこないというか、守備が苦手だったんで嫌だなって思ったんですけど、監督さんと話をして打てる捕手になりたいと思ったんです」。理想はOBでもある城島健司氏(ソフトバンク会長付特別アドバイザー兼シニアコーディネーター)のような「打てる捕手」だ。 冬の練習では打撃力向上のためにウエートレーニングに力を入れた。上半身の強化に努め、ベンチプレスは72キロから92キロにアップ。スイングスピードなど打撃面だけでなくウイークポイントだったスローイングも安定した。「今日はリードもうまくできたし、こうやって勝てたのでキャッチャーになって良かったと思います。背番号も3なんで気負いすぎず気楽にやろうかなと思います」とこの日の勝利で大きな自信をつかんだ。 目標は3年前の先輩たちが果たした準優勝を越えること。「今日は投手に助けてもらったので次は打線が頑張りたい。自分が一番目立つんだという気持ちでやっていきます」。背番号3をつけた「4番捕手」が攻守でチームを勝利へと引っ張っていく。(前田泰子)
西日本新聞社