時代を象徴、中森明菜と安室奈美恵の対決…リハーサルはピリピリムード全開 第53回NHK紅白で「飾りじゃないのよ涙は」を歌唱
【歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡】 「何のために、この仕事をしているのかって言ったら、ファンの子たちが喜んでくれるのが私にとっては一番でした」 【写真2枚】初々しいビキニ姿の中森明菜 等 2002年の大みそか、14年ぶりに「第53回NHK紅白歌合戦」にカムバックすることになった中森明菜はそう喜びをかみ締めていたが、一方で「デビュー20周年という節目の年に『紅白』という晴れの舞台に立てることを大変に光栄に思っています」とコメントを出した。 音楽業界を含む芸能界で、期待こそあれど明菜の「紅白」復帰を予想した者がどれだけいただろうか。だが、明菜のカムバックに向けて奔走したのは言うまでもなくユニバーサルミュージックの寺林晁氏だった。 当時を知る音楽関係者は「明菜がユニバーサルに移籍する前から、寺さんは『紅白』へのカムバックを念頭に入れていたようでした」と振り返った上で次のように語る。 「移籍後、最初のアルバムがカバーアルバムの『ZERO album~歌姫Ⅱ』でした。万が一、『紅白』にカムバックできたとしても、まさか明菜に他アーティストのカバー曲を歌わせるわけにはいかない。寺さんもそこは十分に計算していて、『紅白』のタイミングに合わせて、自身のヒット曲を新たにアレンジし直したセルフ・カバーアルバム『Akina Nakamori~歌姫ダブル・ディケイド』の発売を考えた。だいたいユニバーサルが明菜との契約を結ぶまでに何だかんだで2年を要しましたからね。その間にいろいろ戦略を練っていたのだと思います。まず他アーティストのカバーアルバムでボーカリストとしての新境地を切り開き、その後に自身のヒット曲の新録アルバムを出すことで、アーティストとしてグレードアップした明菜をアピールしたかったのでしょう」 その上で「その戦略は(松田)聖子の『瑠璃色の地球』や(山口)百恵の『秋桜』で話題を作るばかりか、頭を剃り上げた明菜のジャケット写真で波紋を呼ぶなど徹底していましたよ。さすがにワーナー・パイオニア(現ワーナーミュージック・ジャパン)時代から明菜を手掛けてきただけに、明菜の売り方は熟知している。いずれにしても、この年は明菜の話題に終始した気がします。まさに寺さんの戦略が見事に炸裂したような感じでした」とも。 そういった戦略が功を奏したのかもしれない。「紅白」での歌唱曲は、アルバム「歌姫ダブル・ディケイド」にも収録した「飾りじゃないのよ涙は」となった。この曲はシンガー・ソングライターの井上陽水が、他アーティストとしては初めて提供した作品である。それだけに明菜と陽水との関係は深く、業界内では明菜を「歌姫」と呼んだのは「陽水が最初だったのではないか」といった逸話もあったほどだ。