「これもザクの子孫?」ジオン軍の顔「ザクII」の系譜はどのように紡がれていったのか
脈々と受け継がれていく「ザクII」の系譜
さらにその思想は受け継がれ、ギラ・ドーガの後継機として「ギラ・ズール」が『機動戦士ガンダムUC』に登場します。そして、ギラ・ズール親衛隊機をベースに、ネオ・ジオンの残党である「袖付き」の技術試験用試作機として開発されたのが「クラーケ・ズール」で、これは旧ジオン軍の「高速機動型ザク」のコンセプトを再現した機体になります。 高速機動型ザクとは、ジオン軍がニュータイプ専用機開発プロジェクト「ビショップ計画」によって開発した試験用の機体で、「ジオング」のテストベッド機ともいわれています。時を経て、かつての技術を取り入れるという流れは、「ガンダム」シリーズの歴史を感じられるため、ファンであれば、胸が熱くなる展開ではないでしょうか。 さらに『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にも、ザクIIを連想させるビジュアルの「メッサーF01型」という機体が登場します。本機は、反地球連邦政府運動組織「マフティー」の主力機であり、上述したギラ・ドーガや、最後のシャア専用機「サザビー」といったネオ・ジオン系MSを彷彿とさせるビジュアルに加え、肩にスパイクを備えます。 開発はアナハイム・エレクトロニクス(AE)社で、ガンプラ「HG 1/144 メッサーF01型」(BANDAI SPIRITS)の説明書によると、AE社のマフティーへの関与をカモフラージュするために、ネオ・ジオン系MSの外見にしたと考えられるとか。胸のあたりは連邦系MSの意匠にも見え、本機にザクIIの設計思想がどの程度、引き継がれているかは分かりませんが、逆にいえば肩のスパイクひとつとってもザクIIやギラ・ドーガの系譜と見なされる(カモフラージュできる)ということであり、そうした意味で「血脈は受け継がれている」といえるかもしれません。 ほか、「物語世界における歴史的、直接的なつながり」はないながらも、『機動戦士ガンダム00』の「ティエレン」や、『新機動戦記ガンダムW』の「リーオー」、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の「ザクウォーリア」といった「ザク的な存在」であるところの機体が描かれています。メタ的な視点という意味でも、「ザクII」の存在の大きさがうかがえるといえるでしょう。 改めて多岐に渡る「ガンダム」シリーズを視聴する際、「ザクの子孫」たちに注目すれば、より深く「物語内外の歴史」を感じられるかもしれません。
LUIS FIELD