あなたもきっとやっている……内出血、骨折、そして腰痛のリスクもある恐ろしい「危険な介護」とは
腕を「動かす」のではなく、腕を「取り・支え・導く」
介助のために利用者の腕を動かすとき、手早く終わらせようとして無造作に握り、モノのように動かしてしまう人がいますが、それではいけません。やさしく触れて手首を取り、穏やかに導く意識を持ちましょう。 以下のような手順で腕(あるいは手首)を取るようにしてください。これは、すべての介助で必ず行ってほしい手技です。 【1】使う指は3本だけ 親指・中指・薬指で輪をつくり、相手の手首のあたりに触れます。人差し指、小指は、できるだけ相手の体から離して浮かせておきます。 【2】指の輪で触れる たとえば利用者の手首に触れる場合は、【1】でつくった輪で手首の近くを包み、指先で軽く触れます。そしてその形のまま、自分の手を利用者の指先のほうへ軽く引きます。 【3】ひっかけたまま手を導く 指でつくった輪を手元にひっかければ利用者の手を容易に動かせます。
利用者の腕(手首)を下からとる/支える
介助のため利用者の肘に触れたり、車イスへ移るため肘かけを握ってもらったりする場合もあるでしょう。そのようなときは、下から触れて支えるようなかたちで腕(または手首)をとりましょう(下の2枚の写真を参照)。 上から手を伸ばしてつかむと、利用者は警戒して身を固くします。下から腕を取るほうが、お年寄りや患者さんは安心でき、介助もスムーズに運ぶのです。 相手の手首や腕を取るときには大切なポイントがあります。 無言でいきなり体にさわられたら、誰だって驚きます。まずはコミュニケーションできる位置まで近づき、「手をさわりますね」などと声をかけてから、ゆっくり触れましょう。 また、利用者が座っているときは、必ず片腕ずつ取るようにしてください。一度に両腕に触れられると、利用者は警戒して腕を引っ込めようとするので、介助がうまくいかなくなります。 利用者の利き手を把握しておき、そちらから取ることも大切です。利き手は、いわば「使い慣れた側」なので、利き手から手技が行われると安心できます。 また、介助を始める前から利用者の体に力が入っているときは、下のイラストように、下から手首を取って「力を抜きましょうね」とやさしく言葉をかけながら、腕を軽く左右にゆするとリラックスしてもらえます。 以上は介助者にも利用者にも安全で、ケガが起きにくい介助をするための基本的な体の使い方でした。これらをどのように実際の介助動作に応用すればいいかは、後編記事で詳しく解説します。 後編記事「『寝たきり』の人でも簡単に起こせる! リハビリに役立つ『握らない』起き上がり介助の全手順」ヘ続く。
根津 良幸(埼玉医科大学客員教授)