「就活に親が参戦」は当たり前?◆広がるオヤカク、正しい距離感とは【時事ドットコム取材班】#令和の親#令和の子
◇大学も手厚いフォロー展開
大妻女子大の親向け説明会は全学年が対象で、2年連続で参加する親もいるという。就職支援センターの井上信人課長は、「就活環境は1年で激変する。子どもをサポートするために最新の情報を知りたいという人が多い」と話す。 親への情報発信に力を入れる大学は他にもある。青山学院大(渋谷区)は、親向けガイドブックを作成。就活中の親の対応でうれしかったことや、つらかったこととして、「指摘をせずに話を聞いてくれた」「企業選びの軸を押し付けられた」といった学生の声を紹介している。 青山キャンパスで毎年6月頃に開催する説明会や個別相談会も人気で、今年の個別相談会には約100組が参加。3年生の親が多いが、就活が停滞している4年生の親が子どもには内緒で訪れることもあるそうだ。進路・就職センターの担当者は「保護者が子どもの就活に無関心でいるのは良くないが、前のめりになり過ぎている場合もある。学生の意向を尊重し、見守ってもらえるように呼び掛けている」と説明する。 東北大(仙台市)は、学生の就活事例などをまとめた親向けの就活講座と個別相談を実施しており、「就活や進路について親としてどう対応したらいいか」などの内容が寄せられているという。 ◇親の介入は不可避? 就活を巡る学生と親、企業の関係について、人事コンサルティング会社「人材研究所」(港区)の曽和利光代表に話を聞いた。曽和氏は、「オヤカクの背景には学生の売り手市場と一人っ子の増加などが関係している」と指摘する。人手不足の中、高卒や中途採用を含めた採用市場全体で人材獲得競争が激しくなっており、一番採用しやすい大卒マーケットで確実に人材を確保したいという企業の意識が強まっているという。 また、出生動向基本調査で夫婦の子どもの数を調べると、一人っ子の割合は30年前に比べ2倍となり、全体の2割を占める。「子どもへの関心が高まり、保護者が就活に介入するようになってきた。企業側は、保護者の心配を解消することが学生の内定辞退の防止につながると考え、オヤカクをするのが常識という雰囲気になっている」と分析する。 今後も少子化が進み親子の距離が近くなれば、就活に親が参戦するのは当たり前となっていきそうだ。しかし、曽和氏は「今の就活状況を知らない保護者のアドバイスが子どもに悪影響を与えることもある」と警鐘を鳴らす。急成長企業や企業間の取引が中心の「BtoB」企業に関する知識が不足していて正しい助言ができないケースや、売り手市場といえども従業員5000人以上の大企業の求人倍率は0.34倍で難関であることを知らず、大手企業を受けるように安易に勧める場合もあるという。 親にはどのような姿勢が求められるのだろう。「大学が説明会を開くのは、過保護だからではなく、保護者に正しい情報提供をして適切な関わり方を求めているというのが真の狙いでしょう。就活に関する情報やサービスは充実していても、最終的には自分を第一に考えてくれる保護者を信頼して意見を求める学生は多い。保護者もしっかりと準備した上でサポートしてあげてほしい」と語った。 この記事は、時事通信社とYahoo!ニュースの共同連携企画です。