究極の理想は「ドラえもん」…20年近く愛される「調整さん」が変えたもの・変えなかったもの
地味で目立たない存在だけど、気づいたらずっと身近にある――そんな商品やサービスが、世の中には存在する。日程調整ウェブサービス「調整さん」も、その一つといえるだろう。 【写真】CDが売れないサブスク時代に「CDレコ」がバカ売れしている「意外な理由」 2006年のリリース以来、日程候補に〇、×、△を入れるだけのシンプルな画面は今もほぼ変わらない。栄枯盛衰の激しいウェブサービス市場において大きな競合が現れることもなく、気づいたら「日程調整といえば調整さん」と代名詞のような地位を確立している。 地味すぎるゆえにブルーオーシャンになっているのか。それともビジネスモデルに隠された強みがあるのか……? 調整さんが20年近くにわたって長く支持され続ける秘密を、同事業を運営するミクステンド株式会社 代表取締役の北野智大氏に聞いた。 取材・文/堀尾大悟
コロナの5類移行でユーザー数が2倍に急増
2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類感染症」に移行したのを機に、職場でのオフィシャルな飲み会も解禁され、夜の繁華街にも活気が戻ってきた。 それとともに、私たちが久しぶりに“再会”したものがある。日程調整サービス「調整さん」だ。 「あれ、調整さんってまだあったんだ……」 飲み会の誘いとともに調整さんのURLが送られてきたとき、筆者もそんな失礼な感想を抱いてしまった。そのことを正直に打ち明けると、北野氏は笑って答えてくれた。 「おかげさまでユーザーの方々からは『久しぶりに調整さんを使ってみました』『便利さをあらためて実感しています。ありがとうございます! 』と、多くの感謝の言葉を頂きました」 調整さんのMAU(月間ユニークユーザー数)が最も伸びる時期は、忘年会シーズンを控えた11月。直近の2023年11月のMAUは、過去最高の700万人を突破した。これは、コロナ禍に入る前の2019年11月の、実に約2倍に相当するという。 その要因として、自粛期間が長く続いた反動ももちろんあるだろう。それに加えて北野氏は「仕様を大きく変えなかったことで、迷うことなく使えたこともあるのではないか」と分析する。 「久々に利用してくれたユーザーの皆さんに『調整さんも変わってしまった』と思われたら離れていってしまいます。ブランクがあってもキャッチアップしやすいよう、『昔の調整さん』の良さを残したことが要因として大きいと思います」