「紅麹」が引き起こす可能性がある「ファンコーニ症候群」とは? 腎臓専門医に聞いてみた
ファンコーニ症候群とは
編集部: ファンコーニ症候群とはどのようなものなのでしょうか? 天野先生: 腎臓には、尿を作った後に、体に本当に必要な成分を再び吸収する役割があります。ファンコーニ症候群では、この吸収が上手くできず、ブドウ糖や重炭酸塩、リン、尿酸、カリウム、一部のアミノ酸などが過剰に排泄されます。この症候群には、遺伝的な原因と後天的な原因があります。後天的な原因は、薬や一部の血液疾患などによって引き起こされます。 編集部: 一般論として、ファンコーニ症候群の治療はどのようにおこなわれるのか教えてください。 天野先生: 「原因とされる物質を取り除くこと」が最も重要です。低カリウム血症にはカリウム補充、代謝性アシドーシスには炭酸水素ナトリウムなどの補充がおこなわれます。また、尿細管の障害が深刻な場合はステロイド治療も検討されます。日本腎臓学会の報告によれば、紅麹コレステロール低減薬を服用している患者では、ステロイド治療をおこなったのは1/4、治療を中止しただけが3/4程度です。 編集部: 尿細管が障害されるとどのような問題が起こるのですか? 天野先生: 尿細管の障害は、感染症や薬の副作用、アレルギー反応などで引き起こされることがあります。障害された尿細管の場所によって、さまざまな問題が生じます。糸球体に近い場所にある「近位尿細管」が影響を受けると、尿細管性アシドーシスやファンコーニ症候群などの問題が発生します。実際、日本腎臓学会の報告によれば、紅麹コレステロール低減薬を服用している患者では、ファンコーニ症候群に特有の血中のカリウムやリン、尿酸の濃度が低下し、尿中に糖が見られることが確認されています。
サプリメントとの付き合い方
編集部: 天野先生がおすすめするサプリメントの選び方について教えてください。 天野先生: 医療機関で販売されているサプリメントがおすすめです。一般的に、医療施設で販売されているサプリメントは、一般的なものよりも適切な試験をクリアしていることが多く、効果も高い場合があります。一般的なサプリメントを使う前には、必ず薬剤師に相談することが望ましいですね。 編集部: サプリメントと薬の併用は安全ですか? 天野先生: 一般的には安全ですが、基礎疾患がある人や高齢者は気を付ける必要があります。例えば、腎機能が低下している高齢者が骨粗しょう症予防のためにビタミンDを過剰に摂取すると、血中のカルシウム濃度が上がりすぎて腎機能がさらに低下する可能性があります。そのため、サプリメントを服用している方は定期的に血液検査を受けて、副作用がないか確認することが大切です。 編集部: サプリメントを摂取する量やタイミングによって効果が変わることはありますか? 天野先生: もちろんです。サプリメントの使用の目的は大きく2つに分かれます。「栄養素の不足を補うために使う場合」と、「特定の目的や状態を改善するために使う場合」です。例えば、ビタミンCのサプリメントを考えてみましょう。不足を補うためには、1日あたり約0.1g程度の摂取が十分ですが、免疫機能を維持したり、シミなどを予防したりするためには、1日に2000~3000mg(2~3g)の摂取が必要です。