「こどものミカタ」夜間中学が必要とされる背景は
富山テレビ放送
県内の教育課題を考えるシリーズ「こどものミカタ」。 30日のテーマは全国で開設が相次いでいる「夜間中学」です。 現在県内にはありませんが、設置に向けて検討を進めるための県の協議会が先週立ち上がりました。 いま夜間中学が必要とされている、その背景とは。 先週、県教育委員会が「夜間中学」について有識者などが意見を交わす協議会を初めて開きました。 「夜間中学」は週5日、夜に授業が行われ、すべての過程を修了すると中学校卒業の資格が得られます。 授業料はかかりません。 原則、現役の中学生は通えず戦後の混乱期の中で教育を受けられなかった人や、母国で義務教育を修了していない外国籍の人などが対象です。 そして、近年、夜間中学の役割として期待されるようになったのが。 *県心の健康センター 水上みどり主幹・所長代理 「引きこもりや不登校から抜け出して自分の社会参加を考えたときに、学び直しをしたいという人も」 不登校の児童生徒は、2022年度の最新の調査で全国でおよそ30万人。 県内では「2675人」と過去最も多くなりました。 夜間中学は、形として中学校を卒業していても、不登校などの理由で学校に十分に通うことが出来なかった人たちの「学びなおしの場」としての役割も期待されています。 *富山大学大学院 教職実践開発研究科 西島健史教授 「『学校とはこういうもの』という先入観や固定観念があったらこの夜間中学はうまくいかない。柔軟にどれだけ考えて対応していけるか」 いま全国で開設が相次ぐ夜間中学校。 文部科学省は各都道府県に少なくとも1校の設置を促していて、今年4月現在、24の都道府県に53校。 再来年度には34都道府県に68校となる予定です。 北陸でも来年度に石川県で。 再来年度には福井県での開校が決まっていますが、富山はこれから検討を進める段階です。 こうした中、夜間中学の開設にひときわ関心を寄せている人たちがいます。 「起立性調節障害」、通称「OD」を患う子どもの保護者たちです。 *OD患者の保護者 「朝起きられなくてお昼ごろから動き出せる。学校に行けるときは行く」 「夜の7時すぎくらいから通える夜中までのバイトをシフト制で入ったり」 「OD」は、思春期に自律神経がうまく機能しないことで起こる病気で、中高生では10人にひとり、全国でおよそ70万人にのぼるとされています。 血流が不足することでめまい、倦怠感、頭痛などさまざまな症状が現れます。 特に朝、症状が強く、夕方以降は回復する傾向があります。 数年で改善する場合がほとんどといいますが、長期の不登校・引きこもりに至る人も少なくありません。 富山市で2か月に1度、保護者同士で情報交換をしている「親の会」。 OD当事者やその家族が夜間中学という「学びの場」をどう捉えているのか聞いてみました。 *OD患者の保護者 「勉強したくても具合が悪くて、夜になったら元気になる子もいる。さまざ まな理由で中学校に行けない(子もいる)」 「夜元気なときに気軽に勉強できる環境が必要」 OD当事者にとって夜は活動時間に適していることから夜間中学は有効としながらも、一方でこんな意見が。 *OD患者の保護者 「(夜間中学は)現役の中学生が行けなければあまり意味がないのかなと。高校生や大人になれば学ぶ環境はあるし自分で動けると思うが、親にも頼らなくちゃいけない、自分ひとりでできない学年の子たちにスポットを当ててサポートを強化してもらえたらなと」 検討されている夜間中学は、原則、現役の中学生は通うことができません。 一般の公立中学校では年間1015時間の授業を受ける必要がありますが、夜間中学の場合は700時間しか確保できないためです。 しかし全国では、柔軟なカリキュラムを組める「学びの多様化学校」、いわゆる「不登校特例校」の指定を受けるなどして現役中学生も通えるようになっている夜間中学が現在2校あります。 こうした形の夜間中学は今後も増える見通しです。 学びたいのに学べない、学校に行きたくても行けない。それぞれの事情があります。 義務教育として子供たちの置かれている様々な事情に合わせた選択肢があって然るべきです。 どんな夜間中学を今後目指していくのか。 まずはさまざまなニーズを理解する必要があると感じます。
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