全国一律で固定電話が使えるようＮＴＴに課している法律上の義務を巡り、今後どうあるべきかの議論が総務省の特別委員会で進められている。公衆電話の在り方は論点とされていないようだが、必要数を永続的に確保していくためにも、その役割を改めて認識しておきたい。 　携帯電話は便利な半面、災害発生時にはつながりにくくなる場合が少なくない。東日本大震災などと同様、能登半島地震でも実際に起きている。能登半島地震では、停電が起きて携帯電話の基地局が稼働しなくなったり、設備が故障したりした。通信会社は船上に基地局を設けたほか、ドローンを基地局として運用したものの、通信エリアが限られたため、公衆電話の利用を呼びかけた経緯がある。 　公衆電話は災害時の優先接続機能を備えている。停電時に使える利点もある。東日本大震災が発生した２０１１（平成２３）年３月１１日は東日本全域で５００万回の利用があった。前日の１０倍に上り、災害時の有用性が示された。

　公衆電話は、住む地域にかかわらず、誰もが格差なく利用できる「ユニバーサルサービス」として一定の面積ごとに設置が義務付けられている。駅や公共施設など利用が見込まれる場所には、需要に応じて配置される。 　総数は、１９８４（昭和５９）年度の９３万４９０３台をピークに２０２３（令和５）年度は１１万３３３台に減少した。県内は、ＮＴＴ東日本が発足した１９９９年度の１万１５１２台から２０２３年度は１９５３台に減っている。 　震災後、ＮＴＴ東日本は自治体との連携協定などに基づき、災害時の避難所となる公民館や学校などに無料で使える「災害時用公衆電話」を設置してきた。２０２３年度末時点で県内の１０６５カ所に備えられている。携帯電話の普及に伴い、公衆電話の平時の利用は減少傾向にある。人口減によって利用頻度がさらに低下したとしても、災害時の通信手段を補完する役割を踏まえた対応が欠かせない。 　公衆電話の撤去が進んだことで、現在の配置場所を知らない人は多いのではないか。ＮＴＴ東日本はホームページで紹介している。災害への備えの一つとして、どこにあるかを把握しておくのも大切だろう。（渡部純）