センバツ2022 和歌山東、確かな足跡 「魂の野球」最後まで /和歌山
センバツ初出場初勝利を挙げ、目標のベスト8をかけて2回戦に臨んだ和歌山東は24日、浦和学院(埼玉)に0―7で敗れた。初回から痛打を浴び、攻撃でも自慢の足を封じられ、反撃の糸口をつかめなかった。それでも随所にファインプレーが出るなど、気持ちを込めて最後まで戦い抜き、初の甲子園に確かな足跡を残した。【橋本陵汰、加藤敦久、玉城達郎】 1回戦で好投した麻田が、初回から連打を浴びる苦しい展開となった。2点を先取され、二回にも長打から失点。「どこに投げてもミートされ、嫌だった」と麻田は振り返った。 相手のペースに引きずり込まれる展開となったが、エースの意地であらがう。三回2死一、三塁のピンチを切り抜けると、四回2死二塁ではセンター前に落ちそうな打球を中川がダイビングキャッチ。守備陣もエースをもり立てる。中川は「投手が頑張ってくれていたので、『絶対に捕る』との思いだった」と気合を強調しつつ、「一歩目の踏みだしを大事にした」と、秘訣(ひけつ)を明かした。捕球後にこぼれる笑み。確かな技術と思いがつながったプレーだった。 中川のビッグプレーもあり三、四回を無失点に抑え、相手の勢いを止めたかに思われたが五回、麻田が「甘く入った」と反省するボールを運ばれ、本塁打を浴びた。その後、更にピンチを迎えたところで、ついにマウンドを降りた。母梨恵さん(37)は「1回戦をテレビで見直したら堂々と投げていた。(今日は)緊張していたのかな」と思いやった。リリーフした田村は1点を失ったが、後続を断った。 「監督から『絶対に気持ちで出ろ』と言われていた。出塁することだけを考えた」。5点を追う六回の攻撃。この回先頭の瀬村が、チーム初安打となる内野安打を放った。泥臭い一打に、和歌山東らしい「魂の野球」が垣間見えた。 1回戦の延長十一回、一挙7点を奪った攻撃も瀬村の安打から始まった。チャンステーマ「青のプライド」が流れる。田村が左前打で続き、更に高まる反撃の予感。しかし、「変化球の切れもよく、ストレートも走っていた」と森岡が振り返る、相手左腕・宮城の抜群の投球を前に、和歌山東の反撃は届かなかった。 七、八回も野別のダイビングキャッチなど果敢な守備を見せたが、失点を重ねた。未完の「魂の野球」。和歌山東の挑戦は、更に技術と気持ちを高めるべく、夏に持ち越しとなった。 ◇旗で選手を鼓舞 ○…アルプススタンド最後列では、田中龍選手(3年)らが校章の入った応援旗をはためかせた。「自分が持ちます」と立候補したという田中選手。1回戦では七回まで一人で持ち続け、他の選手と交代。この日も「風があって重たい」という状況ながら、教員の助けを借りつつ、左右に振られる旗を試合後半まで支えた。「自分はサポートしかできないが、ベンチ入り選手には皆の思いをもって戦ってほしい」と、両足でしっかりと踏ん張りながら、グラウンドにエールを送っていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇成長した姿、夏に再び 森岡颯太選手(3年) 思うようなプレーができず、悔いが残る――。初めての甲子園は、そんなほろ苦い場所になった。 初戦は5打数3安打。延長十一回に勝ち越し打を放った。打撃の主力として期待された通りの活躍だった。「バットは振れていた」と、この試合も調子は悪くなかったという。しかし、相手投手の変化球や真っすぐの切れに対応できなかった。 「1本、1本」という気持ちで打席に入った六回2死二、三塁の好機。ここでも自分のスイングをさせてもらえず、ファーストゴロ。「メンタル面の弱さが出てしまった」。最終回も「簡単に終わらせてはいけない。自分が出塁して勢いをつけたい」と臨んだが、球をとらえきれず最後の打者となった。 「本塁打を1本は打ちたい」との甲子園での目標はかなわなかった。長打という自分の強みを出せなかった聖地だが、一方で七回、抜けそうな一塁線の打球を好捕。苦手な守備ではチームに貢献した。「夏に戻ってきて、ベスト8を達成したい」。成長した姿を再び甲子園で見せることを誓った。【橋本陵汰、加藤敦久】