茶農家4人の「そのぎ抹茶」 茶バターやテリーヌ…コラボで人気! 原料の碾茶も生産拡大 長崎
長崎県内で生産される茶葉6割を生産する東彼東彼杵町で5年前に誕生した「そのぎ抹茶」。4人の茶農家が起業した「FORTHEES(フォーティーズ)」(同町八反田郷)が、原料の「碾茶(てんちゃ)」から製造を手がけている。県内外の和洋菓子店とのコラボ商品といった「6次産業化」も進め、販路を拡大。碾茶の生産量を伸ばしている。 抹茶は京都の宇治、愛知の西尾が代表的な産地。同社は2019年、碾茶の生産ラインを持つ工場を県内で初めて稼働させ、抹茶製造に乗り出した。碾茶は収穫前に日差しを遮り、うま味や柔らかさを増した茶葉を蒸した後、揉まずに乾燥させたもの。抹茶は碾茶をひいたものを言い、粉末茶などとは異なる。 同社の福田新也社長(41)は茶農家の3代目。8年ほど前、海外を訪れた際に、ドリンクやスイーツの抹茶ブームに触れ、用途の幅広さに可能性を感じた。「抹茶なら横ばいでなく、展望が開ける」と6年前、生産者仲間3人と同社を設立した。 4人は県産緑茶の品評会で競い合うライバル同士だが、抹茶は4人の茶葉を持ち寄り製造。工場稼働後、新型コロナ禍などで売り上げが伸び悩んだ時期もあったが、1年目に20トンだった碾茶の生産量は昨年、37トンまで拡大した。 碾茶は主に佐賀県嬉野市の市場に出しているが、4トンは自社で抹茶に加工し、約8割を北米や欧州に輸出。残りは自社製品としてスーパーなど小売店に出したり、和洋菓子や飲料の原材料として卸したりしている。取引先は県内外90社を超える。 東彼杵町瀬戸郷の菓子製造「ちわたや」の「茶バター」は、同社がパンに塗るお茶として考案。同町のふるさと納税返礼品としても人気上位の商品だ。そのぎ抹茶の生産開始後は原料を粉茶から切り換え、売り上げが伸びた。同社の担当者は「地元産を待っていた」と振り返る。 挑戦に共感する老舗和菓子店も。平戸市の「熊屋」はそのぎ抹茶とくず粉、生クリームを使った和風のテリーヌ菓子「翠簾(すいれん)」を創作。県外の大手百貨店のカタログ販売品に採用された。熊屋誠一郎社長(40)は「和菓子屋も茶農家も保守的と思われがちだが、枠にとらわれてはいない」と胸を張る。 東京・御徒町の「大心堂雷おこし」は、2年前に商品化した「そのぎ抹茶おこし」をJR長崎駅の土産物店で販売。担当者は「ご縁があって、生産者の顔が見える『抹茶』と出合えた。当社初のコラボ商品で新たな挑戦」と話す。 こうしたコラボ商品について、福田社長は「手に取った人が『そのぎ茶って何?』と気に留めることで、茶農家や町全体が盛り上がることが願い」と話した。