USJ再建の森岡毅氏の刀、今度は家庭用パスタ立て直しへ 「消費者の重心を射抜く戦略」
製粉大手のニップンは20日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市此花区)などの再生を手がけたマーケティング会社の刀(大阪市)と協業したことを発表した。すでに令和4年10月から協業をスタートさせており、今年3月に発売した「オーマイプレミアム」ブランドの乾燥パスタの新商品は、刀のマーケティングのノウハウを生かして開発し、ヒットにつながったことを明かした。 ■家庭用パスタは成熟市場 「パスタ関連業界は代表的な成熟市場。原材料に近くて、差別化が非常に難しい」。都内で会見した刀の森岡毅最高経営責任者(CEO)は、現在の家庭用パスタ市場についてこう指摘。そうした市場を活性化するには、「消費者の脳の中の構造、重心を射抜く戦略が重要だ」と強調した。 3月に発売した新商品「もちっとおいしいスパゲッティ」は、「早く茹で上がる」といった簡便性での差別化が中心となっていた商品開発の方向性を大きく転換し、「おいしさ」に特化させて開発された。社内のヒアリングや約100人規模の市場調査などから得た意見をヒントにメーカー目線で行っていたという開発過程を見直し、刀との協業では、消費者目線を重視し、6万人以上のユーザーから家庭用パスタに求める意見を収集。その結果、乾燥パスタについては、簡便性よりも「食感」を求めている消費者が多いことが判明し、「モチっ」とした食感が特徴の新商品の開発に至ったという。 ■「協業手応え感じている」 同商品は販売後の2カ月で1000万食を売り上げ、その結果、同社の乾燥パスタブランドのシェアは5月までの2カ月で前年同期比32ポイント増加した。ニップンの前鶴俊哉社長は「成熟産業に変化を起こすには、消費者を深く理解するマーケティングが必要という結論に至った。協業の手応えを感じている」と強調。今年度の冷凍と乾燥を合わせたオーマイプレミアムブランドの目標販売額120億円の達成に向けて、順調に売り上げを伸ばしているとの見解を示した。 一方で、刀との協業についてこのタイミングで明かした理由について、前鶴氏は「競合の取り組みなども考慮して、(発表の)タイミングをみていた」と説明。また、両社の協業期間は令和7年中頃までの約3年間で、森岡氏は「(協業期間内に)ニップンの社員に刀のマーケティングノウハウが維持強化できるような内部継承システムを作ることを大切にしたい」と述べた。