なぜ、いつも密室で…国会質疑で明らかになった「殺傷兵器の開発・輸出」に日本が加担している深刻事態
「私たちの血税が“殺傷兵器の開発”に使われているなんて知らなかった」
「(共同開発を進めている殺傷兵器が)その先、どのような使われ方をするかということについても議論をしておりません。まずは今、与党での議論が行われています。議論の行方を注視したうえで、政府としての判断をしたいと思っています」 【世界4位を目指す韓国】今や世界中の軍隊に影響力を及ぼしている「韓国の戦闘兵器」の実力とは… これは、11月1日の参議院・予算委員会での山添拓議員の質疑に対する岸田文雄首相の答弁だ。 この日、同議員の質疑では、消費税減税、雇用、男女の賃金格差、非正規ワーカー、PFAS、イスラエルのガザ進侵攻等の問題が追及されたが、中でも国会中継の視聴者たちを騒然とさせたのは、「武器輸出」の問題である。 この問題がSNSで投稿されると、たちまち拡散。以下のようなコメントが続出していた。 「殺傷兵器の使われ方が全く議論されていないって……」 「私たちの血税が殺傷兵器の開発に使われているなんて知らなかった」 「こんな重大な問題が閣議決定で決まるなんて」 武器輸出の問題は、今どんな状況にあるのか。改めてこの問題について聞くべく、山添拓参議院議員を訪ねた。 ◆「兵器」で途上国支援? 「日本とイギリス、イタリアで共同開発を進める次世代戦闘機の問題を含め、武器輸出を拡大していこうという動きは、昨年12月の安保3文書の閣議決定が大転換のきっかけになっていると思います。 次世代戦闘機に加えて、兵器のライセンス生産、主として米軍需産業からライセンスを受けて日本で生産する兵器を第三国に輸出できるようにしようとしています。また、ODAでは非軍事協力だと言ってきた途上国への支援に対して、OSA(政府安全保障能力強化支援)という仕組みをつくり、途上国支援と称して装備品を提供しようとしています。 いずれも『我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するため』として進めようとしているのが、現状です」 山添拓議員はそう説明する。 1967年の「武器輸出三原則」以降、憲法9条のもと、国際紛争を助長することになる武器輸出はしないという立場をとってきた日本だが、それが大きく変わったのが、安倍政権の’14年。武器輸出三原則が全面的に見直しされ、「防衛装備移転三原則」と変わり、これまで国是とされてきた原則が180度転換することになったという。 ◆「密室協議」で国民に説明されることなく大転換された「武器輸出のルール」 「防衛装備移転三原則では、武器輸出が禁止される対象国は極めて例外的で、原則可能になりました。しかしそれでも、例えば戦闘機のような殺傷兵器まで輸出することは当時考えられていませんでしたし、政府もそのようには説明していませんでした。 ところが、武器輸出を大々的に進め軍需産業を成長産業にしていこうという大転換が、国民に説明されることなく、“密室協議”によって、今まさに進められようとしているわけです」 日英伊で共同開発する次期戦闘機の開発・輸出計画や、イスラエルの軍事企業と日本の商社が提携し、日本に武器を販売する動きがあること、自公によって武器輸出のルールが見直されていることなどは、多くの人が知らない事実だったろう。 なぜ重大なことが、いつも密室で決まるのか。 「それは知らせたくないからでしょう。 春先から6~7月にかけて、殺傷能力のある武器輸出を認めることへの賛否を尋ねた各報道機関の世論調査では、反対が6~7割という結果になっていました。国会の参考人質疑では、武器を輸出し、儲けようとするのは『死の商人国家への堕落』だという指摘もなされました。 ところが、私たちが国会でこの問題を質問しても、『今与党で協議中なので』といって回答しない態度です。 それで、閣議決定で決めたら、すでに決まったことなのでと言い、変えないことが予想されます。民主主義の場である国会を軽視した対応ではないかと思います」