「ルイヴィトン」が創造するAIマーケティング 香水の匂いも視覚化
ブランドの現地化にもAI活用
黄金の水しぶきが漂う中央に、ヘアケアブランド「ケラスターゼ」が堂々とたたずむ。化粧品世界最大手の仏ロレアルは、生成AIで作成したという、ケラスターゼのビジュアルデザインを公開した。 そのプロンプト(指示文)を見ると、「黄金の水」「白い背景」「スタジオライト」「ぼやけたディテール」といった言葉が打ち込まれている。開発を率いたのは、新たに立ち上がった「CREAITECH(クレアイテック)」というラボだ。 ラボで実験しているのは生成AIを取り入れることで、「グローバルのブランディング戦略に依拠しながら、各地にローカライズされたコンテンツを大規模に展開できないか」という試みである。 ロレアルは傘下に37ブランドを抱え、日本を含む世界各国で販売している。各地の嗜好に合った訴求力のあるマーケティング施策につなげ、世界販売を底上げする。 手始めに20以上の生成AI技術を試し、1000枚以上の画像を作成。その過程で、ブランドごとの世界観をコード化する手法を確立した。これを生成AIに認識させることで、イメージに近いデザインがすぐに出てくるようにした。ケラスターゼとスキンケアブランド「ラ ロッシュ ポゼ」を皮切りに、全ブランドに取り組みを広げる考えだ。
アプリ上で家具を自由に配置
自分の部屋をアプリで撮影(スキャン)するだけで、デジタル空間にその風景を再現し、家具を自由に置けるようにしたのは、世界最大の家具チェーン「イケア」だ。 このデジタルツールの名称は「IKEA Kreativ(イケア クリアティーヴ)」。イケアが販売する家具を配置するだけでなく、実際には存在する家具やアイテムを画面から消去することもできる。選択した家具を移動したり、回転したり、積み重ねたりして、理想の空間をデザイン。それを保存して、家族や友人と共有もできる。 家具を買ってから、家具の寸法や色合いが部屋に合わなかったという客の不満を解消したのだ。 実は、このツールには自動運転車で使われるAI技術が組み込まれている。イケアを運営するスウェーデンのインカグループが20年に買収した米企業が開発し、自動運転車が周囲の空間を理解する要領で、部屋の写真をAIのアルゴリズムで解析し、部屋のリアルな「3Dレプリカ」を形にする。 AIをうまく使えば、自社の商品やブランド体験を、分かりやすく視覚化できる。今やブランドは最新テクノロジーで磨く時代だ。
酒井 大輔