ラグビー・サンウルブズのスーパーラグビー除外の真相と日本代表へ及ぼす影響とは?
もっとも南アフリカ・カンファレンスへの参加が叶った2016年以降も、サンウルブズとジャパンエスアールは苦境に立たされてきた。放映権料の分配は得られず、日本協会との連携も乱れたようだった。 2023年のワールドカップ開催地を決定する際も、ジャパンエスアールが関係を良好にすべき南アフリカが立候補しているなか、日本協会は持っている投票権を全てフランスに奉仕したと見られる。結局、2023年大会はフランスに決まった。 今年のワールドカップ日本大会閉幕後、日本のトップリーグは2020年1月に開幕する。従来までと違いスーパーラグビーと同時期にシーズンが行わるスケジュールに変わった。サンウルブズ入りが期待される日本代表クラスの多くは、国内リーグのクラブでサンウルブズ以上の報酬、福利厚生を得ている。これでは、サンウルブズへの参加は難しい。2020年以降の選手契約についてジャパンエスアールの関係者は「(日本協会を介してではなく)トップリーグのチームと個別に相談したい」としていた。 サンウルブズがスーパーラグビーから除外される議論が強まった今年3月、日本協会が理事会でスーパーラグビーへの参戦継続のため交渉したいと表明したが、時すでに遅しの印象もなくはない。 ワールドカップ日本大会のチケットがアジア諸国で多く買われるなど、サンザーがサンウルブズに期待していた「アジアでのラグビー普及」「アジア市場の拡大」というミッションが果たされた側面はあった。しかし、南アフリカの態度を軟化させるには至らなかったのだろうか……。 サンウルブズのスーパーラグビー参加は、ナショナルチームの強化に著しく寄与してきた。チーム自体はここまで通算6勝と歩みは穏やかながら日本代表と同種の戦術でハイレベルな試合を実施することがテストマッチ(代表戦)のよきリハーサルとなっていた。
日本代表は2018年6月のツアーでイタリア代表、ジョージア代表から2勝。当時サンウルブズと日本代表のヘッドコーチを兼ねていたジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、「相手に対するフィジカリティへの一貫性が、過密日程下で培われたものです。日本ラグビーがこの先も国際舞台で戦いたいのならば、スーパーラグビー参戦によって得られるパスウェイが必要。仮に私が2019年以降も日本代表のコーチングに携わるとしたら、やはりそうしたシチュエーション(サンウルブズの存続)を求めます」と話した。 国際統括団体のワールドラグビーは現在、新たな国代表による国際大会の開催を企画中。しかし、「それが強化に繋がるかはわからない。本当に大事なのはユース世代の育成」とある日本代表選手。スーパーラグビーというソリューションを本当に逃すのだとしたら、日本協会は2023年大会以降に向けた強化ビジョンをいまから打ち立てなくてはならない。 今年からサンウルブズのゼネラルマネージャーと日本代表の強化副委員長を兼務する藤井雄一郎・日本協会理事は、いまの立場を得る前から強化面でのサンウルブズの価値を深く理解。2017年までの日本代表強化委員会と日本代表首脳とのコミュニケーション不全などに苦心しながら、日本代表とサンウルブズの懸け橋となってきた。 その藤井氏は、以前、「(サンウルブズでは)まずは強いチームを作る。なおかつ、魅力のあるチームを作らなあかん。どこかで突出していいチームだと思われないと、スパンと切られる可能性もある。切るに惜しいチームであらなければあかん」と語っていた。 ジャパンエスアールにはSANZAARのボードメンバーがいないため、リーグの未来を議論する会議には参加できない。報道によれば、22日に「スーパーラグビーの今後」に関する発表がなされそう。その翌日、サンウルブズはシンガポールで南アフリカのライオンズと戦う予定になっている。 (文責・向風見也/ラグビーライター)