真矢ミキ、映画『九十歳。何がめでたい』で草笛光子の娘役を演じる「光子さんの輝かしい奇跡の瞬間を目の前で見たんだと思います」
映画『九十歳。何がめでたい』が6月21日に公開となった。本誌・女性セブンで佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』の連載がスタートしたのは2015年4月のこと。90歳を過ぎて感じた時代とのズレや身体の衰えを綴った佐藤さんは昨年100歳に。そしてこの映画で佐藤さんを演じる草笛光子さんは現在90歳。人生100年時代を体現するふたりは、映画は、どう映ったのか──。 【写真】クールビューティーとは一転、飾らない普段の表情で演じた真矢ミキ
真矢ミキさんといえば、キリリとしたクールビューティーの印象が強いが、本作では一変。愛子の娘・響子役で、飾らない普段の表情を見せている。最初の登場シーンは鮮烈だ。断筆宣言をして日がなボーッと大音量のテレビの前に座る愛子に対して、「たまには出掛けたら?」「ちょっとは体動かした方がいいんじゃない?」などつっけんどんな物言いをする。 「そのシーン、実は映画を見たかたから非難ごうごうだったらどうしようと思っていました。でも、自分自身を振り返っても、娘って、母親に対してどうしても言葉がキツくなったりするじゃないですか。それを後で反省したりするわけですが、そんな親子の近い関係だからこその心情が見えたらと思いましたね」 そんな娘に「めんどくさ~い。耳は聞こえないし、目は見えないし、足は痛いし腰も痛いし心臓も痛い」などと切り返す愛子を慮って響子はしみじみ思う。「長生きするって大変なのねぇ」。
演じるうえで意識したのは家族のバランスだったという。 「家族って、みんなそれぞれ、“今はあなたの重要な時期”って無意識に協力体制になるバランサーのような時期があるような気がするんです。例えば、お兄ちゃんが受験だから、みんなで極力静かな声で生活していたり、神社に行って各々兄の合格祈ったり……その“今”が断筆後の愛子先生であり、この映画で言えば(草笛)光子さんだったと思うんです。だから私はもうそのバランサーとして、ほんの少し存在が見えればいいなっていうぐらいで考えていました」 完成した映画を見てどう思ったか。真矢さんに感想を聞くと──。 「とにかく光子さんが素晴らしい。私の立場でそんな言い方は失礼なんですが、非常にそう思いました。役者って長くやっていても、すべてが光って、すべてが当たり役になるわけじゃなくて、そういう役に当たるのは奇跡のような出来事なんです。でも、今作は誰が見ても光子さんの当たり役。輝かしい奇跡の瞬間を、私は目の前で見たんだと思います」 原作の2冊のエッセイからも刺激を受けたという。 「愛子先生に凄みある生き方のようなものを感じています。あるがままに飾らないことは如何に粋かと。そして、前に進む原動力は人との関係から生まれること、周りの人とわちゃわちゃと関わっていくことが人生の楽しみであり、人として前進できる力が鍛えられるのだと教えていただきました」 昨年、登山と俳句を始めるなど、「やりたいことが多すぎて、いくら時間があっても足りない」と話す真矢さん。今年、還暦を迎えて気持ちが楽になったという。 「今までは少しでも若く見られたいと年齢にあらがっていたことに気がつきました。これからは年を重ねることには無頓着で、その時々で考えればいいやと思っています。私の母もそんな人でサバサバしていました。そこはちょっと愛子さんと重なるんですよね」 ※女性セブン2024年7月4日号