中国本土の投資家、グローバルな資産配分が増加
【東方新報】中国本土の投資家の世界規模での多様化投資への関心の高まりは、政府関係筋と金融サービス業界の両方から注目を集めている。 英国に本拠を置く世界最大級の銀行・香港上海銀行(HSBC)グループの調査によると、中国本土の投資家が資産を世界的に配分しようとする意欲は、今年に入り1年前と比較して上昇しており、中国本土の回答者の約52パーセントが、海外市場への投資を増やすつもりだと答えたという HSBCの調査結果を裏付けるのは、世界的な投資運営会社のアジア部門「ピクテ投資顧問アジア(Pictet Asset Management Asia)」の仲介事業部責任者フリーマン・ツァン(Freeman Tsang)氏の見解だ。 彼の説明によると、ここ数か月間で急増した中国人の海外投資意欲は、同社が取り扱うファンドや金融商品の中国本土の投資家の購入量の急増に表れているという。 また中国本土の投資家と海外市場を結びつける「適格国内投資家(Qualified Domestic Institutional Investors)」および「適格国内有限責任組合(Qualified. Domestic Limited Partners)」は、以前承認された枠を使い切った後も、続々と申請が続いているという。 「中国の金利引き下げで、現在の預金金利は1パーセントをわずかに上回る程度のため、中国の人びとはより高い利回りを生み出す他の機会を検討している。そのためピクテ社では、クロスボーダーの資産運用および異なる国や地域の規制当局が互いのファンドを承認し相互販売できるようにする枠組『相互承認制度(MRF)』の活動が、過去数か月で顕著に拡大した」とツァン氏は説明する。 2021年9月に開始された「粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)におけるクロスボーダー・ウェルス・マネジメント・コネクト・スキーム(Cross-boundary Wealth Management Connect Scheme)」は、今年2月に小売投資家の参入障壁を引き下げ、投資可能な商品の範囲を拡大し、許容される投資上限を引き上げることで、アップグレードが果たされた。 そしてアップグレードからわずか4か月後、香港金融管理局は、利用可能な商品、枠、販売プロセスに関するさらなる改定計画を発表した。 ツァン氏の解説によると「GBAにベースを置く中国本土投資家が香港・マカオ資本市場にアクセスできる『クロスボーダー資産運用連携パイロットスキーム(Cross-boundary Wealth Management Connect Pilot Scheme)』に対する市場の需要は、当初は控えめだった。中国人民銀行広東省支店のデータでは、このプログラムでは2月末時点で、本土向け、香港・マカオ向けの両方の合計152億元(約3080億円)の資本流動だったが、7月末の時点では835億元(約1兆6917億円)に急増し、2月比4倍以上の増加となった。そしてその大半は香港とマカオへの資金流入だった」という。 アップグレードから1か月後、中国人民銀行広東省支店の発表によると、広東省の「クロスボーダー・ウェルス・マネジメント・コネクト・スキーム」に新たには2万4288人の個人投資家が登録し、前月比で9.16倍に急増している。 国際的金融機関も素早く対応した。HSBCは、中国本土の投資家が海外市場にアクセスできる「クロスボーダー資産運用連携パイロットスキーム」の香港・マカオ向きルートで、100以上のファンドを提供している。またスタンダード・チャータードバンクは香港・マカオ向きルートで約550の商品を導入し、シンガポールのDBS銀行も中国本土の投資家向けに220以上の資産運用商品を発売した。 15年7月に導入された「相互承認制度」では香港籍のファンドは中国本土の投資家が利用でき、その逆も可能だが、現行規制では香港から調達したファンドの運用資産の最大50パーセントを中国本土の投資家に販売することができ、その逆方向にも同様の上限が設定されている。 これに対し「中国証券監督管理委員会(CSRC)」は今年6月、MRF規制の改正草案を発表、上限を80パーセントに引き上げる予定だ。これが実現すれば、中国本土の投資家には、香港の資本市場への参入により多くの選択肢を持つことができるようになる。 この草案はまだ最終決定待ちの段階だが、市場の専門家は今年第4四半期には決定されると見込んでいる。 国際金融機関はMRF規制の緩和を活用するため、香港籍の商品をさらに投入する計画を立てており、ピクテ社も同じ動きをしているという。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。