黒人キャッチや立ちんぼが跋扈するデンジャラスゾーンになった? 〝新宿・歌舞伎町フーゾク〟の現在
突然、2人組の黒人に絡まれた
「ヘンなしゃしん、とってる」 突然背後から肩をつかまれた。振り返ると、ハードなアクション映画に出てくるようなイカツイ顔をした身長185㎝ほどの黒人の男が、氷のように冷たくナイフのように鋭い目でギラリと睨みつけている。瞬時に〝ヤバイ〟と思った──。 【画像】すごい…新宿歌舞伎町の〝丸見え〟なガールズバー 夜10時半過ぎ、新宿・歌舞伎町のピンサロ、ソープ、ヘルスなどが並ぶ仲見世通り。取材で訪れていた私は、歌舞伎町の夜の街並みをデジタルカメラで撮影していた。セントラルロードの中心部で、ゴジラの顔が飾られている新宿東宝ビルの夜景を撮影した後、風俗店をチェックするべく仲見世通りに入り夜景を撮っていたときの出来事だった。 黒人たちはカタコトの日本語に、英語を交じえて、何やら要求してくる。どうやら「写真を見せろ」と言っているらしい。深夜の薄暗い小路で、巨大な壁のような黒い肌の男2人に上から突き刺すような目で見下ろされ、あまりの圧迫感に、どうにも身動きが取れない。 黒人たちの剣幕に押されて、身の危険を感じた私は、仕方なくデジカメの画面で撮影したばかりの写真を見せた。そうしないと監禁状態から解放されないからだ。何の変哲もない街並みが写っているのを確認した黒人2人は、くるりと振り向きその場を去っていった。 私が思わず「ビックリ!」と言うと、黒人男性の1人が、セントラルロードに戻る途中でこちらを振り返り、覚めた表情でぶっきらぼうに言い放った。 「ば・か・や・ろ……」 周囲で一部始終を見ていた白人男女の5人組は呆然としていた。 怖かった。何も取られず、ケガもせずに、その場を無事に離れたとき、心底ホッとした。同時に、歌舞伎町の危険さを再認識した。 ◆コロナ禍を経て日本一に賑わう歓楽街 10年ほど前にも、夜の歌舞伎町で屈強な黒人男性に絡まれたことがある。冬の日の夜8時ごろ、さくら通りでガールズバーの看板の写真を撮影していると、後ろから全盛期のマイク・タイソン(プロボクサーで世界ヘビー級王者)のような大柄な黒人に絡まれ、避けようとすると胸ぐらをつかまれて、殴られそうになった。そのときは、写真を見せずに、なんとか脱出できた。今回も、深夜のさくら通りには、格闘家のボブ・サップのような巨体の黒人の姿があった。周囲を威圧する大きな存在感に脅威と恐怖を感じた。 セントラルロードを抜け、大久保公園を見に行くと、最近の報道通り、周辺に日本人の立ちんぼがいた。黒いミニスカート姿の若い女性、派手なボディコン風の衣装のセクシーギャルなど、一目でそれとわかった。10月下旬のこの日は、女性より客らしき男性の姿が多かった。ボディコンギャルを見て「いるよ。どうする? 買っちゃう? 買っちゃおうか!」とハシャいでいる30代くらいの男性2人組が印象的だった。まるで観光地である。罪の意識はないようだ。買ったほうには罰則規定がなく逮捕されないため、買春が違法行為であることを知らないのだろう。 歌舞伎町一番街では、赤いアーチの近くのビルの前に人だかりができていた。人々の視線の先を追っていくと、2階の『M』というガールズバーのガラス窓越しに女性の生脚が見え、パンチラ寸前である。こういう店があるのは、全国の盛り場でも歌舞伎町くらいだ。 新名所である東急歌舞伎町タワーの2階のレストランはインバウンド客でいっぱい。深夜になっても街には水商売店の客引きが溢れ、ものすごい数の人がうごめいている。歌舞伎町の賑わいは日本一だ。取材旅行で地方の歓楽街を巡ってから来ると毎回そう感じるのだが、今回も同じであった。 歌舞伎町はとにかく話題が尽きない。10月末だけでも、売掛金の返済を巡り女性客を殴ったホストが働いていたホストクラブの営業停止、女性客にアダルトビデオへの出演を強要したメンズコンセプトカフェの摘発、ハロウィーンで路上飲食をしないように警備員らが注意して回るなど、連日多様な出来事が起きている。 ◆「歌舞伎町のフーゾク」の現在 ’80~’90年代は歌舞伎町といえば「風俗」のイメージが濃く、〝歌舞伎町のフーゾク〟はメディアでも注目のトピックだった。だが、’00年代の浄化作戦以来、往年の勢いはなくなってしまった。近頃では、ホストクラブを巡るさまざまなトラブルや、大久保公園周辺に現れる立ちんぼに関しての報道ばかりが目立つ。そのためそれほど注目されないが、実は歌舞伎町の風俗店はまだまだ健在だ。 メインの業種は店舗型ヘルスで、歌舞伎町とその周辺に14軒が営業している。これに続くのがソープランドで9軒が点在。さらにピンサロは3軒、ストリップ劇場が1軒ある。さらにデリヘル、ホテヘルなど歌舞伎町で遊べる出張型風俗店は300店をはるかに超える。〝アジア屈指の大歓楽街〟〝東洋の不夜城〟は、浄化作戦前の’00年前後に比べれば健全化されたとはいえ、まだまだ活況がある。 歌舞伎町の店舗型風俗店は、ここ10年ほどで安値店への業態の転換が相次いだ。2軒のヘルスが激安で遊べる手コキ・オナクラへとリニューアル、さらに高級ソープの1軒が大幅に値下げして大衆店となった。一方で、消費増税や物価高に伴う値上げが続き、いくつかのソープは料金を改定し数千円アップとなった。ヘルスやピンサロも同様で、相場は1000円ほど高値に。なお、ストリップ劇場は10年前は3軒あったが、閉館が相次ぎ、現在は1軒のみとなっている。 なぜ、こうなったのだろうか。大きな要因は日本経済の停滞による消費の低迷にある。集客に苦しむ風俗店はリニューアルし、業態をソフトなものに変えて低価格店となった。手コキ・オナクラ店が増えたのは濃厚接触が忌避されたコロナ禍の影響もあるだろう。ストリップ劇場が減ったのは、時代の流れである。風俗店、出会い系、立ちんぼ、アダルトメディアなど、多種の色遊びがそろう現代において、昔ながらのヌード劇場の需要が縮小していくのは避けられないところだ。 一方で出張型の風俗店は、店舗型の衰退とは逆に年々数が増え、さらにこの10年でますます多様化が進んだ。今年9月には業界初のショートコースデリヘル『サクッとヌいてバイバイ』がグランドオープン。高級店ながら30分コース(1万5000円)から遊べるのが売りだ。7月には、流行りの〝推し活〟をテーマにした新店も登場している。『TOKYO IDOL ACADEMY ~ボクだけの推し活ライフ~』は、「あなたの元にアイドルが訪れます」「あなただけの推し活ライフを」と紹介サイトでアピールする〝学園・アイドル・コスプレ・ロリ〟がコンセプトの店。料金は70分1万6000円~となり、全国区の知名度を誇る創業15年以上の〝虎の穴グループ〟の経験、知識、ノウハウが詰め込まれている。 今後は店舗型が少しずつ減少していき、出張型はさらに数が増え、多様化していくのが見込まれる。また、今以上に国際化が進み、外国人客が利用可能な風俗店が増えていくのが予想される。すでに高級ソープ『ドンファン』、大衆ソープ『深海魚』、老舗ヘルス『新宿ストロベリージャム』などでは特別料金で外国人客を受け入れている。今後も歌舞伎町の風俗店が、時とともに変化する社会環境に適応し続けることは間違いない。 有料版『FRIDAY GOLD』では、生駒氏が厳選した、今なお健在な「歌舞伎町フーゾク」33店リストを紹介している。 取材・文・写真:生駒明
FRIDAYデジタル