「働くことで自分が強くなる」10年ぶりに就職めざす女性 孤立してリタイヤの繰り返し「心や体に不安あっても自立したい」
孤立してリタイヤの繰り返し
チラシで事業所の存在を知った「えり」さん。3カ月前から通って支援を受けている。高校を卒業後、飲食店などで働いた経験もあるが―。 就労移行支援を受ける・えりさん: 「(仕事が)うまく覚えられない。器用ではないので、皆さんサクサク早くやられているけど、私はマイペースで。『こうした方が、ああした方がいいよ』(周囲は)やってくださるんですけど、やっぱり理解が遅いので自分のペースになってしまって、(職場で)孤立してしまって、耐えられなくなってリタイヤする繰り返しではありました」
就労から遠ざかり10年以上
結婚や親の介護もあって就労から遠ざかって10年以上ー。 この間、精神科に通院する一方、「働きたい」思いも抱えてきた。 ようやくスーパーでの体験実習も始まったが―。 就労移行支援を受ける・えりさん: 「(仕事でわからないことを)どうやって聞いたらいいのかがわからなくて。後から聞こうと思ってもその時のことが聞けずじまいになったり、あのとき聞けばよかったってことがあったりとか」 コミュニケーションに不安を抱えながら体験実習へ。
緊張、不安の連続も…やりがい
スーパーでの仕事は週5日。 商品を並べる「品出し」だ。覚えることも多く緊張や不安の連続だが、少しずつやりがいも感じている。 えりさん: 「必要とされているっていうか、ここにいられて働けていることがありがたいって思えてきたっていうか。毎日が空っぽだったのが、コップに水が満たされていくよう」
課題は「定着率」
今回の実習、実は受け入れを持ちかけたのは企業側。一定規模の企業には障害者の雇用が義務付けられていて、雇用率は段階的に引き上げられ2024年度は2.5%、2026年度には2.7%に。 加えて、労働力不足に、働き方の多様化と企業を取り巻く環境も変化している。 こちらの店舗では2024年度、障害者5人の求人枠を新たに設けた。 綿半パートナーズ人事ユニットジョブコーチ・川元千恵美さん: 「(障害者雇用は)社会貢献の一つではあると思いますが、企業側も視野を広げるのに大切なことだと思っています。(それぞれの)特性によって苦手なこともあるが、できることを伸ばしていきたい。すごく前向きに働いてくださっているので、やりがいを感じてもらえるのは企業側もうれしい」 えりさんの働きぶりはー。 綿半パートナーズ人事ユニットジョブコーチ・川元千恵美さん: 「まじめな方だなと感じています。逆に、それががんばり過ぎてしまうところが彼女の課題かと感じているので、ここは彼女の仕事、ここは違う人の仕事と明確に指示しないと、恐らく全部やりたいタイプかな。それは指示する側が明確にすると継続して働けるのかなと思う」 「就労移行支援」で大きな課題となっているのが定着率。就職1年目では精神障害で49.3%、発達障害で71.5%などという調査結果がある。 人間関係や労働条件などで壁にぶつかることも多々あるが、こうした実習は企業・利用者双方が歩み寄る場にもなっていると言える。 ファシリカ長野・戸谷林太郎さん: 「うまくいかなかったときには(スタッフが)一緒に謝ったり、一緒に(行動を)修正をすることを通じて、社会の中でどう生きていったらいいかを気づいてもらったり、(それまでの)自分の価値観を修正しながら社会の中でうまく生きていってもらえたらいい」