公益通報したら「不利益な取り扱い」受けた…被害主張の3人が会見 弁護士は保護法の“機能不全”指摘
「保護法の“建前”実際にはなかなか機能せず」
Aさんの代理人である河野冬樹弁護士は会見で、「公益通報者保護法には問題があると感じる」と話した。 「保護法では通報者について、通報を理由に、不利益な取り扱いをしてはならないという風に定めており、本来通報によって、被害が生じるというのは起こるはずの無いことです。 ただし、当然、事業者側は『通報されたから不利益な取り扱いをした』などと認めるはずがありません。 たとえばAさんの場合であれば、被告側は仕事のあら探しを行い、不利益な取り扱いの理由については、通報が原因ではなく、あら探しの結果出てきた、書類の細かいミスなどが理由と主張してきたわけです。 Aさんの裁判では、幸いなことに、被告側の主張がある程度否定されて、こちらの主張が認められました。 しかし、この通報を理由に不利益な取り扱いをしてはならないという法の“建前”は、立証責任の問題から、なかなか機能していないというのが実態ではないでしょうか」
消費者庁が法改正を議論も「空文化の恐れ」指摘
公益通報者保護法を管轄する消費者庁では、今年5月から有識者会議を設置。法改正にむけた議論を進めており、報道によると、公益通報を理由とした解雇や減給などの処分に対し、罰則を設けることが検討されているとのことだ。 この動きについて、河野弁護士は「ちょっと皮肉な見方ですが」と前置きしつつ、次のように懸念を示した。 「先ほどの話と重複するところでもありますが、正直、検察が不利益な取り扱いの理由が“通報”にあると、どうやって検察は証明するのだろうかと思います。 民事でも、あまり証明が認められたケースがありませんから、無罪判決を嫌う検察のことを考えると、『立証できない』として、起訴をためらう可能性があるのではと思ってしまいます。 そして、その結果、法律も空文化してしまうのがオチじゃないでしょうか」 企業の不正を発見し、通報者を守るための法律だが、“保護”をどう担保していくのかは丁寧な議論が必要といえそうだ。
弁護士JP編集部