【ウエストランド河本太の『人生相談する側チャンピオン』】第1回 爆笑問題さん! 僕はこれからどうすればいいですか!?
■そもそもボケとかツッコミなんて役割はなかった ――先ほど、太田さんはお笑いにおいてボケが重要なんだとおっしゃってましたけど、ネタ作りを担当される方はボケの人が多いんですか? 太田 いや、どうなんですかね。ウエストランドの形でいうと「一人しゃべり」に近くて、井口はボケでもあるけど世の中に対するツッコミもしていて、それで笑いをとっている。だから厳密には井口がボケだとかツッコミだとは言い切れないんですよね。 そもそもボケとツッコミという分け方自体、俺らの時はなかったよね。そこはあまり重要じゃなかった。爆笑問題は最初コントをやってて、そのコントの台本は俺が書いてたんだけど、その時のボケは田中だった。だから俺らがお笑いを始めたころは、どっちがどの役割だっていうことは決めてなかったよね。 田中 俺らに関してはそうだね。漫才ブームの時も、どっちがボケ担当でどっちがツッコミ担当だっていうことは言ってなかったと思う。例えばツービートってウエストランドとほぼ一緒の形で、たけしさんがひとりでずっとしゃべっててボケもするんだけど、「バカ野郎」って世の中へのツッコミも入れる。その横できよしさんは「違うよ」「そんなこと言うなよ」って合の手を入れるくらいなんだよ。 太田 そうそう。だからたけしさんはどちらかというとツッコミって認識だったよね。 田中 紳助・竜介も、一応竜介さんがツッコミの立場ではあるけど、紳助さんがほとんどずっとしゃべってるでしょ。当時はボケとツッコミって明確に分かれてなくて、それがだんだんと「ボケっていうのは常識とは違うことを言う。ツッコミっていうのはそれを正す」って成立していくんだよね。 太田 そういうのってきっと、お笑いっていうものを養成所とか学校で教えるようになったから定義されたんじゃないかなと思うよ。当時はお笑いの教科書がなかったから、「漫才はこうあらねばならない」っていう概念もなかった。 田中 だからさ、コンビを組んで「どっちがボケやる?」とか「誰かいいツッコミいねえかな」とかもなかったよね。今はバンドの「ドラム探してます」みたいな感じで「ボケを探してます」なんて言うでしょ。そういう感じじゃなくて、漠然と「音楽やりたいな。じゃあ適当に歌ってみるから、横でピアノで伴奏してみてよ」みたいな感じだった。そもそも俺たちは最初に、「漫才やろう」とか「コントやろう」とか、そういう会話も一切してなかったよね。 河本 そうだったんですね。太田さんが最初に書いた台本がコントだったから、コントをやったっていうだけですか。 太田 そう。今はほら、コントやる人と漫才やる人って分かれてるじゃん。あんまりそういう意識はなかったと思うよ。 爆笑問題からの回答①「あえて言うならお笑いにおいてはボケが最も重要だけど、お笑いに指示も役割もない! 河本がもっとしゃべれ!」 *** ■河本太(こうもとふとし)タイタン所属。1984年1月25日生まれ。岡山県津山市出身。2008年に同級生の井口浩之とウエストランドを結成。M-1グランプリ2022チャンピオン。リフォーム会社に勤めていた経験から電気工事、配管工事が得意。趣味は登山、キャンプ。 ■爆笑問題(ばくしょうもんだい)タイタン所属。ともに1965年生まれの太田光、田中裕二が日大芸術学部で知り合い1988年に結成。数多くのテレビ・ラジオ番組のレギュラーや執筆活動を抱えながらも、隔月開催される「タイタンライブ」では新ネタで出演している。 取材・文/酒井優考 撮影/山添 太