Xを追撃するスレッド、売却危機のティックトック…SNS市場に「地殻変動」
ソーシャルメディア(SNS)市場で地殻変動が始まったのか。メタが運営するスレッドの月間アクティブユーザー(MAU)数が大きく増えるなど、不動の1位だったXに追いつくための競争が激しくなっている。動画ソーシャルメディア分野ではティックトックの地位が揺れている。 ◇どんなことが メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は16日、自身のスレッドアカウントで「スレッドのMAUが3億人を超えた」と明らかにした。昨年7月のサービス開始から1年5カ月ぶりだ。5月基準でMAU6億人のXを急速に追撃している。 ◇これがなぜ重要か Xの1位が固定されたテキスト基盤のソーシャルメディア市場の競争構図が変わっている。スレッドだけでない。2月にサービスを開始したブルースカイも16日基準で加入者2500万人を集めるなど急成長している。 ソーシャルメディア業界ではXの個人情報約款改正、トランプ大統領当選などが「X離れ」と他のソーシャルメディアの加入増加に影響を及ぼしたとみる。Xは10月に「自社プラットフォームに投稿されるコンテンツをチャットボットAIの学習に利用できる」という内容を約款に追加すると公示した。同意か非同意かを決めることはできず、必ず同意しなければXのサービスを利用できない事実上の強制だった。その後他のソーシャルメディアへの「避難」が続いた。ブルースカイは10月18日、Xが政策を変えると発表してからの24時間で新規ユーザー50万人を確保したと発表した。 トランプ次期米大統領の大統領選挙運動に積極的に参加したイーロン・マスク氏に対し反感を持つユーザーもXの代替プラットフォームを探している。ブルースカイはXと類似のスタイルだが、政治コンテンツを除外するなど自分でアルゴリズムを選択できる。米IT専門メディアのザ・バージは「ブルースカイはインターネットの脈を測定する次世代大型サイトになる可能性がある」と評価した。 ◇動画SNSも地殻変動 ショート動画中心のソーシャルメディアも地殻変動を控えている。ワシントンDC控訴裁判所は6日、ティックトックの米国内事業権を強制売却させるいわゆる「ティックトック禁止法」に対し合憲の決定を下した。米国議会は4月に「米国人ユーザーの個人情報が中国に流出する恐れがある」としてティックトックの米国事業売却を命令し、これを履行しない場合には米国内でのサービスを禁止する法案を作った。ティックトックはこの法案が表現の自由を明示した憲法に反するとして違憲確認訴訟を起こしたが棄却された。ティックトックは来年1月19日までに事業権を売却しなければならない。 窮地に追い込まれたティックトックはトランプ次期大統領の助けを望んでいる。16日にティックトックの周受資CEOに会ったトランプ氏は「私はティックトックに対して暖かい感情を持っている。私は34%差で若い層で勝利した。ティックトックが役に立ったと話す人々がいる」と話した。ワシントン・ポストはトランプ氏が議会に法改正を要求するか司法長官に法執行を遅延させる方向で影響を及ぼす可能性があると分析した。 ショート動画の代表走者であるティックトックが売却される場合、類似の機能である「リール」を持つメタのインスタグラムが最も大きな恩恵を受けるだろうという分析が出ている。IT専門メディアのジ・インフォメーションは「ティックトックはメタやスナップなどの企業の広告収入を奪っている。ティックトックが米国でサービスを中断するならば(これらの)広告金額が上がるかもしれない」と分析した。