<スマートスタイル>センバツ平田 第1部 春切符への軌跡/下 事前研究で作戦明確 /島根
◇秋季中国大会・尾道商戦 内角低めを徹底 秋季県大会準優勝から5日後の2019年10月5日。平田の黒崎智博副部長は広島県三次市のみよし運動公園野球場のスタンドにいた。中国大会を見据え、対戦の可能性があるチームを視察するためだ。広島県大会の準決勝、尾道商対広陵。黒崎副部長は、センバツ優勝3回を誇る強豪・広陵から13点を奪って快勝した尾道商の強打を目に焼き付けた。下位打線の分厚さは島根ではお目にかかれないレベルだった。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 そんな尾道商との対戦が決まったのは10月18日。植田悟監督は早速、スコアブックに目を通した。「それにしてもよく打つな」。何とか攻略法を見いだそうと、各打者が手を出したコースや打球の方向を綿密にチェック。「甘い真ん中高めは確実に長打にする。ただ内角低めは詰まりがち。制球力のある古川が本来の力を発揮すれば勝機はある……!」 ミーティングで、植田監督は選手たちに尾道商打線の傾向と対策をレクチャーした。エース古川雅也投手(2年)は早速、投球練習場で得意のストレートに加え、覚えたてのため県大会で封印していたカットボールも投げ込んだ。捕手の要求通り内角低めに次々と決まるようになると、「相手も自分の投球を研究しているはず。直球に加えてもう一種軸になる変化球が決まれば試合を作れる」。 10月25日、鳥取県米子市のどらドラパーク米子市民球場。いよいよ尾道商戦。一回、保科陽太(ひなた)主将(2年)が安打で出塁し、都田明日生選手(1年)、坂田大輝選手(2年)がいずれも犠打を決める。その後2死二、三塁となり、保科主将が相手投手のけん制球の隙(すき)を突いて生還。県大会で見せた機動力で先制した。五回にも安打と犠打でチャンスを広げ、黒田泰司選手(2年)の適時打で追加点を挙げる。 圧巻は古川投手だった。ストレートやカットボール、スライダーを織り交ぜ、研究通りに相手の内角低めを徹底的に突いた。「強豪にも通用する」と回を追うごとにマウンドで自信をみなぎらせ、六回まで無安打に抑えた。八回の2死満塁のピンチも切り抜けて完封。植田監督は「勝てるとしたらこの流れしかなかった」と話し、18年秋に果たせなかった中国大会での1勝をつかんだ。 2回戦の鳥取城北戦は先制したが逆転され、悔しいコールド負け。打撃力に課題を残したものの、中国大会ベスト8は、結果的にセンバツ出場を大きくたぐり寄せることになった。【鈴木周】