BMW「3.0CSL」が3000万円オーバーで売出中! 往年のツーリングカー選手権のレプリカは「ル・マン・クラシック」参戦実績がありました
完全無欠のグループ2レーシングカー仕様に仕立てられつつも……
このほどボナムズ「LES GRANDES MARQUES DU MONDE À PARIS」オークションに出品されたのは、実は本物の3.0CSLグループ2仕様レーシングカーではなく、きわめて高度なレプリカ。もともと「VHRSヒストリックレース」用にチューニングされていたBMW3.0CSをベースに、さる「ジェントルマンレーサー」のために2010年代に入ってから3.0CSLグループ2レプリカ製作プロジェクトがスタートした。 すでにクラシックカーレースで戦っていたベース車両は完全に解体され、ペイントを総剥離。補強された上でFIA準拠のロールケージが取り付けられた。 組み立てられたボディは、フランスの有名なインポーターである「ガレージ・デュ・バック」によって、1977年のル・マン24時間レースに参戦したマシンを模したカラーリングで塗装。またフランスのレーススペシャリスト、およびBMWスペシャリストの手によってサスペンションは再チューニングされ、BBSホイールやEurofacの車高調サスペンションとショック、FIA規約の燃料タンクなどが取り付けられた。 いっぽう「LMコンセプション」のオリヴィエ・ラウディは、レーススペックの3.2L直6エンジンを製作。クーゲルフィッシャー機械式噴射ポンプが取り付けられた結果、テストでは314bhp/7000 rpmの最高出力と、360Nm/6000rpmの最大トルクをマークしたという。 2020年にレトロモビルの「BMWフランス」ブースにてお披露目されるのに間に合うべく完成した3.0CS/Lは、2022年に「FIAグループ2パスポート」を取得し、2032年までレースにエントリーする資格を与えられた。 そして、2023年の「ル・マン・クラシック」にて、ガレージ・デュ・バックのサポートのもとブルーノ・バルデッラの操縦でレースデビュー。BMWファンから「ルイージ」の愛称で親しまれていることになった3.0CS/Lレプリカは、その信頼性と性能を非の打ちどころのないパフォーマンスで発揮し、名誉ある戦果とともにレースを終えた。 こんにちこのBMW 3.0CS/Lグループ2は、高性能で信頼性が高く、希少な自動車で歴史的なモータースポーツに参加したい人にとって望ましい1台といえよう。 FIAとFFSAのレースパスポートにくわえて、一連のモディファイからメンテンナンスに対して発行された請求書、作業中の写真が添えられたドキュメント類、フランス国内の登録書類(シャシーNo.3001227)と一緒に販売されたこの3.0CS/Lレプリカは、「ル・マン・クラシック」であろうと「トゥール・オート」であろうと、「ピーター・オート」社主催のクラシックカーレースプログラムに参加することが望まれているのだ。 ところで、2023年11月のRMサザビーズ「Munich 2023」オークションでは、希少な3.0CSLロードバージョンをベースとして、1990年代にレーシングスペックに改造されたといわれる個体が、記憶・感情などの喚起を意味する「エヴォケーション」と銘打たれて出品。 37万ユーロ~47万ユーロという、かなり強気のエスティメート(推定落札価格)を設定したものの、その下限を大幅に下回る27万2750ユーロ。日本円に換算すれば約4250万円という、出品者側にとってはいささか不本意な価格で落札されたばかりであった。 いっぽう今回のボナムズ出品車は、ベースからしてよりポピュラーな(≒市場価値の低い)3.0CSであることもあってだろうか、はっきり「レプリカ」を名乗るとともに、19万ユーロ~25万ユーロ(邦貨換算約3125万円~4110万円)という控えめなエスティメートを設定していた。 にもかかわらず、2月1日の競売では入札が最低落札価格に届かなかったのか、現在でも当初のエスティメートのまま継続販売となっている。 世界的人気イベント「ル・マン・クラシック」にエントリーしたいというエンスージアストは数あまた存在する中、すでに「パスポート」を手にしているに等しいこの3.0CS/Lはお買い得かとも思われたのだが、やはりそんな奇特な好事家はなかなかいない、ということなのだろうか……?
武田公実
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