「すごく尖ってた」10代の小野賢章が大号泣した“先輩からの忠告” 「役者としての考え方が変わった」
張りつめていた小野さんにかけられた温かい言葉
――おお、先輩に気づかれてしまった? 小野 先輩が「すごくよく頑張っているのは、みんなわかってるから」「そんなにオレが、オレが、とならなくても大丈夫だよ」って優しく声をかけてくれたんです。 作品のなかには自分の役の「立ち位置」がある。シーンごとに、誰を立てるべきなのか、それにあわせて自分がどういう立ち回りをしなくてはいけないのか役割があるんだよ、と。頑張っていることを見ている人は絶対にいるから、自分が自分がとやらなくても大丈夫だから、と言ってくれたんです。 ――それはすごい。 小野 たぶん、いろいろなフラストレーションが溜まっていた時期だったんでしょうね。その自分の気持ちをわかってくれたということと、頑張りを見てくれていたんだという嬉しさと、そう思われていたんだという恥ずかしさが混ざって、そのあとずっと大号泣してしまったんです……。 ――号泣してしまったんですか。 小野 でも、そのときから考え方が変わりましたね。役者としての考え方も変わりましたし、作品の中における自分の立ち位置をすごく考えるようになりました。自分のやるべきことがわかった、というか。 ――先輩は、ずっと小野さんを客観的な立ち位置から見ていたからこそ、気持ちがわかったんでしょうね。 小野 おかげで肩の力がスッと抜けましたね。まあ、尖っている部分や負けず嫌いの部分は、そのあともしばらく残っているんですけど(笑)。
声優を始めたころは「必死に食らいつくという感じだった」
――舞台出身であった小野さんにとって、声優というお仕事にはどんな印象がありましたか。 小野 声優の仕事を始めたころは、何にも知らない状態でやっていたということもあって、言われたことをわからないながらもやっていて、必死に食らいつくという感じだったんです。 いろいろな役者さんと一緒にやりながら、声優としての表現方法を身に着けなくちゃいけないと、毎回の収録が本当に必死でした。そこは経験を重ねて変わってきたところですが、ただ、当時ならではのがむしゃらな良さというものもあったと思っています。そういうものは逆に今はなかなか出せないものなので、ただ年齢を重ねてキャリアを増やしていくだけでもダメだなとは思っていますね。 ――新しい環境にも柔軟に対応する小野さんにおいて、ずっと変わらないところはどんなところだと思いますか? 小野 やっぱり、“負けたくない”って思う気持ちですかね。心の中では、いつも“負けないぞ”と思っています。自分自身の性格として、負けず嫌いなんでしょうね。あと、そうは言いながらも意外とマイペースで、けっこう能天気な部分があるところは変わらないんじゃないかと思いますね。
志田英邦