まちづくりの柱は〝牛乳〟 生産額2位の栃木県那須塩原市 生産、加工から「乾杯」まで
チーズでイベント、牛乳検定も
生乳生産額が全国2位の栃木県那須塩原市は、酪農を地域活性の核に位置付け、独自の「ミルクタウン戦略」に基づくまちづくりを進めている。柱は「魅力ある酪農のまちづくり」と「持続可能な酪農の経営基盤の確保」。乳製品のブランド化や生産者の育成、消費拡大などに取り組み、生産量の拡大を目指している。 【表】ミルクタウン戦略の概要 地方自治体で特定の農畜産物を中心に、まちづくりの「戦略」を策定するのは珍しい。市は2015年に施行した「牛乳で乾杯条例」の浸透に向け、17~22年度に「ミルクタウン戦略」を策定。6年間の活動成果や課題を踏まえ、23年度から新たに5カ年の戦略をスタートさせた。 戦略では、二つの柱と、四つの基本目標、10の戦略を明記。指標として、20年度の生乳生産量16万7626トンを最終年度の27年度に18万5337トンへ引き上げる目標を掲げた。
チーズマイスターの育成も
牛乳や乳製品の理解を深めてもらうため、「牛乳検定」やチーズマイスターの育成に取り組む。市内で増えるチーズ工房などが立ち上げた「那須ナチュラルチーズ研究会」とも連携し、3月に「那須チーズピクニック」と題した体験イベントを初開催した。温室効果ガス削減に寄与する製造方法で生産された乳製品のブランド化にも挑戦する。 酪農家が安心して働ける職場を目指し、酪農ヘルパーの利用を促進する他、新規就農者の研修や受け入れ先を充実させる。生産資材の高騰に負けない経営基盤の確立に向けては、自給飼料の利用拡大や畜舎に太陽光発電設備の設置を促し、コスト低減を後押しする。 市農務畜産課は「酪農は市農業産出額の5割を占めている。消費拡大で酪農経営の安定を図り、地域の基幹産業を守っていく」と話す。 これまでの戦略の成果は、市町村別農業産出額(生乳部門)に表れている。同市は17年に158億円(全国4位)だったのが、22年は213億円(同2位)になった。「牛乳普及推進隊」の結成や、市内の那須拓陽高校が開発したオリジナル乳製品、生産能力が高い優良雌牛の導入(計287頭)などが実現した。(志水隆治)
日本農業新聞