病院に絵画が飾られているのは癒やしのほかに理由があった!? 美術品で節税とはどういうこと?
病院のロビーや受付、廊下、個室などに飾られている絵画や彫刻などの美術品は、単に癒やしの効果だけでなく、節税の観点から購入されることもあります。なぜなら、美術品のなかには減価償却資産として経費計上できるものがあるからです。 本記事では、経費として扱える美術品の価額や範囲について解説します。美術品の節税に関する理解を深めて、病院などで展示されている美術品をより広い視野で観察してみてください。
絵画などの美術品は経費の対象になる
2015年の税制改正により、美術品を減価償却資産として計上できる範囲が広がりました。具体的には、税制改正前は、取得価額が20万円未満の場合にのみ減価償却資産とみなされていましたが、改正後は取得価額が100万円未満の場合と範囲が広がりました。この税制改正によって、より多くの美術品で減価償却が可能となりました。 さらに、取得価格が100万円以上であっても、時の経過により価値が減少することが明らかな場合には、減価償却資産としてみなされる場合があります。 ■減価償却とは 減価償却とは、時の経過により価値が減少する資産(減価償却資産)を、使用可能期間(法定耐用年数)にもとづいて分割し、必要経費として計上する仕組みです。減価償却は、何年にもわたり行われるため、長期的な節税効果が期待できます。
経費として扱える美術品の価額
経費化できる美術品の取り扱いは、取得価額に応じて「30万円未満」「30万円以上100万円未満」「100万円以上」と大きく3つに分けられます。それぞれの価額帯によって、経費化の可否や経費計上の方法などが異なります。 本項では、取得価額に応じた美術品の経費化の可否や経費計上の方法について見ていきましょう。 ■取得価額が30万円未満 取得価額が30万円未満の美術品(減価償却資産)については、少額減価償却資産として全額経費計上が可能です(年間300万円が限度)。 少額減価償却資産を適用できるのは、中小企業法人もしくは農業協同組合などの青色申告法人(通算法人を除く)のうち、従業員数500人以下(2020(令和2)年3月31日までの取得については従業員数が1000人以下まで)の法人です。 なお、取得価額が20万円未満の場合は一括償却資産(3年間で均等に経費計上)の適用が可能です。 ■取得価額が30万円以上100万円未満 取得価額が30万円以上100万円未満の場合、減価償却資産として法定耐用年数に応じた償却が可能です。 美術品の耐用年数は、以下のとおりです。 ●室内装飾品のうち主として金属製のもの(金属製の彫刻など)…15年 ●室内装飾品のうちその他のもの(絵画、陶磁器など)…8年 例えば、30万円以上100万円未満の絵画を取得した場合は、8年かけて償却していきます。 ■取得価額が100万円以上 取得価額が100万円以上の美術品については、通常、非減価償却資産として取り扱われ、経費として計上することができません。非減価償却資産は、時間の経過に伴う価値の減少が明らかな資産を指します。 ただし、取得価額が100万円以上であっても、その美術品が時間の経過によって価値の減少が認識される場合は、減価償却資産に分類され、経費として計上することが可能です。国税庁によると、減価償却資産に該当する美術品の例として、以下の条件をすべて満たすものが挙げられています。 ●会館のロビーや葬祭場のホールなど、不特定多数の人が利用する場所の装飾用や展示用(有料公開を除く)として取得されるもの ●移設が困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなもの ●他の用途に転用する場合、設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないもの 取得価額が100万円以上の場合は、経費化が可能なのは、このような条件を満たす場合に限られることを理解しておきましょう。