日本人は遺伝的にリスクが高い? 世界と日本の「肥満」最新事情
――費用はどの程度ですか? 砂山 月当たり5万5000円ほどになります。保険適用で自己負担3割だとすると、だいたい1万6000円くらいと考えていただくといいでしょう。 ――「痩せたい」と思っている人なら、誰でも使えるものなのでしょうか? 砂山 ウゴービの処方は、BMIにより肥満症と診断され、さらに高脂血症、高血圧症、糖尿病などの既往症を持っている人が対象です。ダイエット目的では処方されません。 ――砂山先生は、ウゴービにどれほど期待していますか? 砂山 先述したように、減量は高血圧症や糖尿病の改善に大きな効果があります。投薬で15%程度の減量が実現するのであれば、そうした病気を患っている人にとって大いなる朗報となるでしょう。 ――今後も新たな抗肥満薬は出てくるのでしょうか。 砂山 現在の抗肥満薬市場をリードしているのは、ウゴービの製造元であるデンマークのノボノルディスクと、アメリカのイーライリリーです。でも、日本企業も新薬開発に精力的ですよ。 抗肥満薬市場はグローバルなので、各国の企業が参入を狙っています。GLP-1以外にも、ほかの受容体に作動する成分を加えて20%程度の減量効果を目指す動きもあります。実用化されれば、外科手術なしに大きな減量が実現するでしょう。 ――最後に、肥満気味な人にアドバイスをいただければ。 砂山 肥満を放置すると、さまざまな生活習慣病のリスクを高めます。また、中年期以降に急に亡くなってしまう人は、高度の肥満症の方が多いです。ぜひご自身の体重管理を心がけてください。もし自分が肥満気味だと思ったら、一度専門医の診察を受けてみてはいかがでしょうか。 ●水道橋メディカルクリニック 院長・砂山聡(すなやま・さとし)1961年生まれ、埼玉県出身。1986年、順天堂大学医学部卒業。順天堂大学循環器内科講師などを経て現職。医学博士。日本循環器学会認定循環器専門医、総合内科専門医。30年以上の長きにわたって、肥満や生活習慣病に特化した研究を続けてきた 取材・文/植村祐介 画像/PIXTA