マクラーレン・アルトゥーラ PHEVでも存在する「らしさ」の隠し味 マクラーレン第2章
マクラーレン「らしさ」
そうした成果は、アルトゥーラに試乗すると、たちどころにして理解できる。 率直にいって、乾燥重量の1395kgは、マクラーレンとしてはヘビー級だが、直近のライバルに対しては80kg近くも軽い。それでも、おそらくはモーターを活用したパワートレインのレスポンスのよさ、そしてサスペンションやステアリングなどの設定により、750SやGTよりも明らかに軽快な反応を示してくれる点は驚きでさえある。 その乗り心地はマクラーレンらしく実にしなやかで洗練されたもの。私はスペインで行なわれた国際試乗会を始めとして、これまでに7~8台のアルトゥーラに試乗したことがあるが、そのなかで、つい先日試乗した1台だけが低速域でゴツゴツした印象を伝えたものの、それ以外はどれも実に快適だった。 アルトゥーラの軽快な印象は、高速道路でも、さらにいえばサーキットを走っても変わらない。常に的確なロードインフォメーションをドライバーに伝えつつ、圧倒的なスタビリティとコントロール性をもたらしてくれる点は、いかにもマクラーレンらしいもの。 そしてミドシップスポーツカーとは思えないほど視界が優れている点も、マクラーレンの優れた伝統といえる。とりわけ斜め後方の視界が良好な点は、高速道路の流入などでバツグンの安心感を生み出してくれるはずだ。 そう、アルトゥーラはハードウェアのほぼすべてが刷新されたが、ドライビングの歓びはこれまでのマクラーレンとまるで変わるところがない。とりわけ、パワー至上主義に走らず、なによりもバランスを最優先して作り込まれている点は、いかにもマクラーレンらしい。 そしてこの思想は、1960年代から1980年代にかけてイギリス系F1チームが実践してきた伝統をダイレクトに受け継いだものでもある。いずれにせよ、電動化時代を迎えてもマクラーレンのポジションとキャラクターが不変であることは間違いなさそうだ。
試乗車のスペック
価格:3070万円(税込 オプションなし) 全長×全幅×全高:4539×1913×1193mm 最高速度:330km/h 0-100km/h加速:3.0秒 燃料消費率:4.6L/100km CO2排出量:104g/km 車両重量:1395kg パワートレイン:V型6気筒2993cc+モーター 使用燃料:ガソリン 最高出力:680ps/7500rpm 最大トルク:73.42kg-m/2250rpm ギアボックス:8速オートマティック タイヤサイズ:235/35ZR19(フロント)295/35ZR20(リア)
大谷達也(執筆) 小川亮輔(撮影) AUTOCAR JAPAN(編集)