「天然石」やパワーストーンの採掘で搾取や環境破壊、テロ資金にも、加担しない買い方は
人権に関する懸念
危険な労働条件から児童労働まで、金やダイヤモンドなどの採掘で確認されている有害な社会的影響の多くは、天然石の採掘でも起こり得る。大量消費される鉱石を大規模に生産しているマダガスカルのような貧しい国ではなおさらだ。 ミャンマーのヒスイやルビー、アフガニスタンのラピスラズリなど、鉱物のサプライチェーンの一部は抑圧的な軍事政権やテロ組織の資金源になっている。 業界関係者によれば、より大きな懸念は、セレブリティーやインフルエンサーがスピリチュアルな健康のために天然石を薦めて大きくビジネスが成長するなかで、採掘者たちが公正な利益の取り分を得ているかどうかだ。 上質な鉱物を扱う米アーケンストーン社では、数千ドル(数十万円)の値が付いた商品も数多く販売している。創業者のロブ・ラビンスキー氏は、コレクターが欲しがる上質な天然石の価値が上がることで、それを採掘する「地元コミュニティーにより多くのお金が流れます」と話す。 しかし、ネット通販サイトeBayで売られているようなアクセサリーに使われるローズクオーツを採掘している人は、はるかに小さな利益しか得ていないと思われる。 「サプライチェーンの底辺にはほぼ間違いなく、ほとんど利益を得ていない人がいます」とグッドフレンド氏は話す。 天然石を購入したいと思っても、フェアトレード認証のようなサステナビリティー基準をクリアしていることを掲げる販売者は見つけにくいだろう。規制当局や消費者からの圧力がほとんどないため、業界ではそのような仕組みの導入が進んでいないのだ。しかし、いくつかの目安に従えば、より有害でない天然石を購入できる。
より倫理的に天然石を手に入れるには
グッドフレンド氏は第一歩として、天然石がどこで採掘されたかを正確に教えてくれる販売者を見つけるべきだとアドバイスしている。アメシストを買うとき、もし販売店が産地を知らなかったり、世界有数の産地である「ブラジル」としか答えることができなかったりしたら、それは赤信号だ。 レビン・ナリー氏は、運ばれる距離がより短い地元の天然石を見つけることも重視している。米国の場合、地元産の天然石は、比較的厳しい規制の下で採掘された証しにもなる。 また、さまざまな鉱物の一般的な価格を知っておけば、怪しい安物を見分けられ、搾取が行われている鉱山を間接的に支援したり、偽物の天然石を誤って購入したりすることを避けられる。 しかし、天然石に大金を投じる余裕がない人でも、料金を支払って自分で採掘できる鉱山を訪れれば、より人や環境への影響が小さい天然石を集められる。たとえば米国カリフォルニア州南部にある「ヒマラヤ鉱山」では、自分でトルマリンを掘り出すことができる。地元の鉱石クラブに参加し、鉱石収集の基本を学ぶのもいい。 レビン・ナリー氏によれば、責任あるサプライチェーンをつくり、地域のコミュニティーに利益をもたらす小規模な採掘を支援する、天然石業界による倫理的な枠組みもある。主導的な役割を果たす企業は新たな顧客も獲得できるだろう。 「天然石を購入する人の多くはエネルギーも大切にしています」とレビン・ナリー氏は話す。「彼らはカルマ(業)を大切にし、ほかの人を大切にしています。つまり、彼らの価値観に合う倫理的な商品を購入できる専門市場があるべきなのです」
文=MADDIE STONE/訳=米井香織