門田隆将氏「尖閣1945」映画化、中国領有権主張で「撮影できない」も「オッペンハイマー」を
作家・門田隆将氏(66)が23年11月に刊行したノンフィクション「尖閣1945」(産経新聞出版)の映画化プロジェクトが18日、都内で行われた会見で発表された。監督は99年「地雷を踏んだらサヨウナラ」と22年「島守の塔」を手がけた、五十嵐匠監督(66)が務め、門田氏の原作を元に脚本を書き、劇映画として製作、公開する。撮影は、台風の時期を避けた25年秋を想定している。 「尖閣1945」は、太平洋戦争末期の1945年(昭20)7月、米軍の上陸を恐れた石垣島の人々が、第一千早丸と第五千早丸で台湾への疎開を開始。第五千早丸は海上で米軍機の攻撃を受けて沈没。第一千早丸もエンジンを損傷し、かつて日本人が暮らしていた真水がある尖閣諸島に漂着も、上陸した人々は飢え、病に次々、倒れていった史実を描いた。 今回の映画化は、門田氏の取材にも協力した、中山義隆石垣市長(57)が「尖閣1945」を読み、感銘を受け、映画化を提案。製作資金を集めるため、18日から、ふるさと納税の一種「ガバメントクラウドファンディング」と企業版ふるさと納税の2つで、各1億5000万円、計3億円を目標金額に設定した。 門田氏は「本を出すのは長い間の悲願。あそこ(尖閣諸島)には、日本人の遺骨がたくさん埋まっているわけでございます。先人の魂と思いが集まっていることを、日本人があまりにも知らなすぎる。それを、ノンフィクション作家として、どうしても掘り下げたいと、長い時間をかけて調べた。市長にもご協力頂き、出版できた」と、まず原作を出版した経緯について説明。その上で「市長に読んで頂き『これは映像化すべきだ』とご連絡を頂き、一緒にやらせて頂くことになった」と映画化を市長から持ちかけられたと明かした。 クラウドファンディングについても触れ「昼の12時からクラウドファンディングで始まった。最低3億円…でも、大作はできない」と強調。福島第1原発事故をテーマに描いた自身の原作を実写映画化した、20年「Fukusima 50」を例に「渡辺謙さん、佐藤浩市さんの熱演に、津波の映像…13億円かかった。皆さん(報道陣)の記事で、どんどん製作費がたまっていくといいなと」と期待。「(クラウドファンディングが)8~10億いったら、ものすごい大作になり100年、残るのに耐え得るものとなる。全国の方に応援して欲しい」と声を大にした。 五十嵐監督は「劇映画を作る」と、門田氏の原作を元に自ら脚本を作ると説明。「私は政治的信条はないが…今回、驚いたのは、石垣市が中心となって作ること。文化的、歴史的に残すのに意義があるという市長の声がある。今まで地方出身の映画は腐るほどあるが、地元で終わっているケースが多いが、今回は全国区になる可能性がある」と期待感を示した。 質疑応答で、キャスティングについて聞かれると、五十嵐監督は「今回、難しいのは(登場人物が)飢餓でやせていくこと。順に撮っていかないと厳しい。覚悟を持ってやらないとできないと思う。スケジュールが、ガチガチのキャストは難しいかも知れない」と説明。「中途半端な形でやると、僕達は負けてしまう」と訴えた。 尖閣諸島は中国が領有権を主張しており現状、上陸すら困難な状況だ。質疑応答で、撮影をどうするのか? と質問が出た。五十嵐監督は「撮影はできません。空撮もできるか分からない」と即答。「石垣なのか与那国なのか、似ているところでドラマを作る。魚釣島に水があったり…というのを史実に基づいて入れながら撮影したい。スタッフ、キャストも、ある意味、覚悟が必要。1つのチームにならないと、なかなか難しい」と訴えた。 09年「剱岳 点の記」などで知られる、元東映の菊池淳夫プロデューサーは「今回、1番、スケジュールで大きな、解決しなければならない問題は、世界的な異常気象による台風。25年の台風のない時期に、キャスティングも含めて台風を避けた秋以降の時期に…慎重に勧めていきたい」と説明。一方で「昨年まで東映にいたが、日本の映画会社で、どこもできない企画。何本か戦争ものをやってきたが、まだまだ知られていないことがある。日本版『オッペンハイマー』という気持ちで撮っていきたい」と意気込んだ。