村上春樹「映画『卒業』のサウンド・トラックは『ミセス・ロビンソン』。若者の切実な突破力みたいなところが共感を呼んだ」
◆Booker T & The M.G.'s「Mrs. Robinson」
サイモンは1968年に映画「卒業」のサウンドトラックのために「ミセス・ロビンソン」を書いて、それがヒットチャートの1位を飾ります。その曲を含んだアルバム『ブックエンド』もアルバム部門の1位を獲得しました。映画「卒業」のサウンドトラックには、この「ミセス・ロビンソン」の他にも、サイモン&ガーファンクルの曲がいくつか、とても印象的に使われています。この映画の映像と、彼らの歌声は切っても切り離せないものになっていますよね。マイク・ニコルズの監督、ダスティン・ホフマンの主演、ひとつの時代の空気を鮮やかに切り取ったフレッシュな映画でした。今観ると、「おいおい、それはちょっと調子良すぎやしないか」とか思ってしまうんだけど、当時は、若者の切実な突破力みたいなところが共感を呼んだみたいです。 ブッカー・T & ザ・MG'sが演奏します。「ミセス・ロビンソン」
◆Bob Dylan「The Boxer」
ポール・サイモンは決して多作なソングライターではないし、歌詞にも凝る方だから、曲作りに時間がかかります。1969年に彼らが出したレコードは「ボクサー」だけですが、これはヒットチャートの7位にまで上がりました。貧乏な少年が家出して都会に出てきて、生き延びるためにボクサーになり、激しく殴ったり殴られたりの厳しい人生を送ることになります。 ボブ・ディランがこの曲を取り上げて歌っています。アルバム『セルフ・ポートレイト』に収録されています。聴いてください。 (TOKYO FM「村上RADIO~ポール・サイモン・ソングブック~」2024年12月29日(日)放送より)