戦艦「武蔵」など発見……民間の海底探査はどのように行われているの?
THE PAGE
今年3月、太平洋戦争中に撃沈された戦艦「武蔵」とみられる廃船が、フィリピン沖の深海で見つかりました。発見したのは、米マイクロソフトの共同創業者で資産家のポール・アレン氏です。ニュースでは、「見つかった」と映像が紹介されますが、広くて深い海のなかで沈没船を見つけるのは相当大変なことでしょう。では、一体どのようにして海底探査を行っているのでしょうか。これまでに1890年に和歌山県串本町の沖合で沈没したトルコの軍艦 『エルトゥールル号』や、1943年に十和田湖に墜落した旧日本陸軍練習機の調査などを手がけた海洋調査会社「ウインディーネットワーク」(静岡県下田市)の杉本憲一社長に聞きました。 【アーカイブ動画】第二次世界大戦で沈没した戦艦「武蔵」の様子
●どうやって調査するの?
ウインディーネットワークでは、研究機関や企業の依頼で沈没船などの捜索のほか、水中遺跡や海底地形の調査に協力しています。 まず調査海域の設定するのですが、こちらは依頼主が決めるとのこと。地元住民の情報や文献などであらかじめ目標物のある場所を特定し、例えばその場所を含んだ500メートル×1000メートルの海域をしらみ潰しに調べていきます。天候や海の透明度、深さにもよりますが、海底は昼でも夜のように暗いことも多く、 調査はとても困難で、例えるならば「暗闇の砂漠のなかで、落し物を探すようなもの」(杉本社長)です。「見つかったら幸運」というくらいの感覚で、発見したときの感動は格別とのことでした。調査期間も千差万別で、短いものは2~3日、海外などの学術調査では数週間に及びます。ただ、相手は海です。時化(しけ)続きでほとんど調査できずに終えることもあるのです。 そして、その調査に使う主な機械がマルチビーム音響探索機と水中ロボットカメラです。 マルチビーム音響探索機とは、機器から発信された音波が海底で反射されて戻ってくるまでの時間を測ることにより、水深を測定する機械。まずはこの機械を船に積んで調査海域を巡り、目標物のある場所を特定する作業を行います。船を進ませながらの計測が可能なので、取得したデータを3D画像にすることで海底面の状況が把握できるのです。その画像から沈没船などを見つけるのですが、「岩などと見分けるのは長年の経験と勘」(杉本社長)で、自然界にないような滑らかな物体が沈んでいると、船や飛行機の可能性が高くなるのです。 場所が分かったら、さらに確認するために投入するのが水中ロボットカメラ。船上から操縦して目標物まで向かい、映像も撮影できるロボットです。海流の影響を直接受けるので、目的地までカメラを誘導するのも熟練の技が必要となります。