子供が喜ぶ“キャラ弁作り”の落とし穴 自作の冷凍おかず利用は「衛生管理」「温度管理」がずぼらだと食中毒リスクが高まる現実
自作の冷凍おかずの落とし穴
キャラ弁ではもう一つ注意すべきことがある。食品の「温度」である。 手の常在菌の中で食中毒を起こす代表格の黄色ブドウ球菌が増殖しやすい温度帯は、30~37℃とされている。キャラ弁の場合、作業時間が長くなり、温かいご飯やおかずが放置されがちで、手袋をしていても細かい手作業で食材に体温が伝わりやすくなる。 「温かいご飯やおかずは、速やかに冷やすのが基本。食材はできるだけ手で触らず、箸やフォークなどを使ったほうがいい」(松永氏) 弁当はすぐに冷やすのが鉄則である。 持ち歩く間も、保冷剤を入れて低温の状態を保ったほうがいいのは言うまでもないが、最近では、市販の冷凍食品で「自然解凍OK」と謳ったおかずが多数出ている。弁当に凍ったまま入れれば、保冷剤代わりになり、食べる頃には解凍されているという商品だ。 非常に使い勝手のいい商品だが、これを家で自作するのが流行っている。弁当のおかずを作り、小分けにして冷凍しておき、凍ったまま弁当に入れるようで、レシピサイトで探すと、「お弁当自然解凍」「自然解凍可」などと謳うレシピが多数出てくる。 しかし、自作のおかずを家庭用冷凍庫で凍らせる場合、市販の商品と同じように扱ってはいけないと松永氏は指摘する。
「自然解凍で食べられる冷凍食品の工場は、衛生管理や急速冷凍の技術レベルが極めて高く、作る段階で細菌やウイルス汚染などがないようにして急速冷凍するので、自然解凍しても細菌の増殖が原則としてありません。しかし、一般家庭の台所で、このような衛生管理や急速冷凍を実現することは不可能で、増殖が始まった時の菌数が市販の自然解凍の冷凍食品とはまったく異なります」 冷凍しても菌が死滅するわけではなく、眠った状態になるだけで、温まれば息を吹き返して増殖を始めることがあるという。食べる前に加熱すれば菌は死滅するが、黄色ブドウ球菌の作る毒素は熱に強く、通常の加熱では消えないため、やはり調理段階で汚染させないことが大前提となる。 ただ、自作では菌が残るとはいえ、冷凍中は増殖しないのなら、「おかずを作る→冷凍→凍ったまま弁当に」と、「おかずを作る→冷ます→そのまま弁当に」で、それほど違いがないように見える。 「問題は使い方です。自然解凍の冷凍食品をお弁当に入れる人は、周りの温かいご飯やおかずを冷ますための保冷剤代わりに入れたりします。もし自作の冷凍食品でこういう使い方をすると、周りのご飯やおかずが温かいので、自作のおかずに潜む菌が一気に増殖する可能性があります。ですから、他のご飯やおかずはしっかり冷ましてから冷凍したおかずを入れ、別途、保冷剤を入れたほうがいいでしょう」(同前) 自作の冷凍おかずを弁当に使う場合、“保冷剤代わり”に使うという意識を捨てて、作ったばかりのおかずを扱うのと同じように弁当を作るべきだという。 忙しい朝の弁当作りにおいて、大量に作って冷凍したおかずをポンと入れるだけの自然解凍おかずを“ずぼら料理”と呼ぶには忍びないが、少なくとも衛生管理と温度管理だけは“ずぼら”にしないほうがいい。 (第3回につづく) 取材・文/清水典之(フリーライター)
【関連記事】
- 《つづきを読む》「簡単・手軽」が強調されがちな“家庭の低温調理”に潜む罠 ローストビーフやゆで鶏の「加熱不足」「表面だけ焼いて放置」が高める食中毒リスク
- 《はじめから読む》「レンチンカップ麺」「手抜き焼きそば」で電子レンジ炎上、「炊飯器ケーキ」にも要注意! SNSで人気の“ずぼらレシピ”が招く悲劇
- 【ハム大手4社の加工肉】国際がん研究機関の発がん性分類「グループ2A」の亜硝酸ナトリウムを含む123商品の実名リスト
- 【ランチ代節約の波紋】夫のために毎日弁当を作る主婦に突き刺さる友人の言葉「彼の部下が見たらどう思う?」
- 職場に「お母さんが作った弁当」は恥ずかしい? 揶揄された男性は「愛妻弁当はOKなのに…」