開戦当初のマリウポリと弾薬不足に直面する現状は二重写し 日本の武器支援の是非とは
ロシアによるウクライナ侵略で激戦地となった東部マリウポリの陥落から20日で2年となった。これに合わせ、当時の戦場を記録した映画「マリウポリの20日間」が日本各地で上映されている。当時の惨状は武器・弾薬不足により東部などで苦戦する現在のウクライナの状況と「二重写しだ」(日本政府関係者)との声があり、支援国による武器提供の重要性が改めて浮き彫りとなっている。 【画像】映画「マリウポリの20日間」の一場面 「ロシア人になりたくない」 2022年2月、露軍の攻撃に遭うマリウポリで地下室に避難したウクライナ人女性がこう訴えた。爆発で足を吹き飛ばされて病院に運ばれたイリヤ君(16)は医師の治療の甲斐なく亡くなった。一連の映像に対し露側が「フェイクだ」と反発する場面もあった。 映画を見た日本政府関係者は「当時のマリウポリの惨状は武器・弾薬不足が深刻化して前線で苦戦する今のウクライナと重なる」と話す。最大の武器支援国である米国は4月下旬、下院がウクライナへの緊急支援予算案を可決し、軍事支援の継続が決まったが、ウクライナ軍の後退を食い止めるほどに戦況が変化する気配はまだない。 米欧と連携しウクライナ支援を続ける日本は防衛装備移転三原則の運用指針などで、ウクライナに対し殺傷能力のある武器は提供できない。 こうした状況について日本政府内外からは疑問の声も上がっている。 長年、ロシアや欧州外交に携わってきた外務省幹部は「紛争に巻き込まれないための外交は重要だ」と強調する。一方で、日本が重視する法の支配に基づく国際秩序に挑むロシアの侵略を許せば、「日本にとって明日はわが身となる」と指摘。「(武器供与を含む)あらゆる支援を通じてウクライナを助けないと、日本が困ったときに誰も助けてくれなくなる」と懸念を示す。外務省OBは「どこの国でもできる武器支援を、日本だけが国内事情でできない。そういう時代は過ぎていくべきだ」と話している。 22年の露軍の侵攻開始以降、政府は2度にわたって運用指針を改定した。昨年12月の改定では、他国のライセンスで国内生産する武器をライセンス元国以外の第三国に輸出できるようにした。ただし、実際に戦闘が行われている国は対象から外したため、米欧がウクライナに供与している155ミリ榴弾砲の砲弾は、英国企業のライセンスで日本国内でも製造しているが、ウクライナへの輸出は認められない。 ある外交筋は「生きるか死ぬかの時、国と国との関係をつなぐのは武器支援だけだ」と警鐘を鳴らしている。(岡田美月)