ぶっつけ本番で平昌五輪出場する羽生結弦は、それでも連覇できるのか?
日本スケート連盟は24日、最終選考会だった全日本選手権終了後にフィギュアスケートの平昌五輪代表を発表、男子シングルは、全日本優勝の宇野昌磨(20、トヨタ自動車)、2位の田中刑事(23、倉敷芸術科学大大学院)に加えて、全日本を怪我のため欠場したソチ五輪金メダリストの羽生結弦(23、ANA)を過去の実績を重視して特別措置で選んだ。 五輪の代表選考基準では、全日本出場は必須条件だが、過去に世界選手権3位以内の実績を持つ選手が怪我などの事情で出場できなかった場合には、特例選出措置があり、世界ランク1位で、ISU公認のシーズンベストスコアが宇野に次いで2番目の羽生は、それらの規定に沿って選出された。 またこの日、来年1月24日から台湾・台北で行われる五輪への最後の“前哨戦”となる四大陸選手権の出場メンバーも発表されたが、宇野、田中、全日本3位だった無良崇人(26、洋菓子のヒロタ)の3人で、羽生は外れた。連盟サイドは、羽生の怪我の回復が間に合えば、ここを復帰戦にさせたいという構想を抱いていたが、羽生サイドとの協議の上、出場を見送ったもの。 もし羽生の体調が万全であれば、平昌五輪での金メダルの大本命で連覇の可能性は高い。だが、復帰戦イコール五輪という“ぶっつけ本番”を余儀なくされることになった。果たして羽生は大丈夫なのか。 元全日本2位で現在、福岡大を指導している中庭健介氏は、「確かに怪我の回復具合に不安はありますが、羽生選手の経験からすれば大丈夫だろうという希望的観測も持てます」という見方をしている。 「不安点は試合勘でしょう。それと怪我の回復具合ですね。右足はジャンプの重要な振み切り、そして着氷をする足になります。スポーツの世界では、怪我で休んだ分のブランクを取り戻すには、その3倍の時間がかかるという説もあります。また練習と、緊張とプレッシャーのかかる実際の試合では肉体と精神への負担が大きく違います。ただ個人差があります。試合間隔が空いても練習でしっかりと滑り込めば大丈夫なタイプの選手と、試合勘がないとまったくダメなタイプの選手に分かれます。羽生選手がどちらのタイプかわかりませんが、試合になると一変する集中力と経験、センスがあります」 羽生は、今季9月のオータムクラシックからスタート。五輪で勝つためショートプログラム(SP)はショパンの「バラード第1番」、フリーは「SEIMEI」に戻し、そのオータムクラシックでは、いきなりSPで自身の持つ110.95点を更新する112.72点の世界最高得点をマークした。 GPシリーズ初戦となる10月のロシア杯では、フリーの冒頭で4種類目の4回転ジャンプとなる大技、4回転ルッツに成功。計290.77点で2位に終わったものの、五輪連覇へ向けて着実なステップを踏んでいた。 だが、11月9日のNHK杯の公式練習で4回転ルッツに挑んだ際、着氷に失敗して転倒、右足関節外側靭帯を損傷した。その後、今月14日に、腱と骨にも炎症があることや、まだ氷上練習ができていないことなどを報告し、スケート連盟は18日に全日本の欠場を発表していた。関係者の話によると氷上練習は再開できているが、本格的なジャンプの練習の段階にはまだ入れていないという。