未来を予知した映画は? 不吉な予言を的中させた問題作(1)他人の生活をのぞきたい…よく見ると怖い人間ドラマ
かつて映画で描かれた光景が現実化する…。そんな奇跡のような事態がごく稀にだが、起こる。優れた映画作家は未来を見通す力があるのだろうか…。今回は、まるで未来を予知していたかのような映画を5本セレクト。背筋がゾッとすると同時に心がワクワクする作品を選んだ。第1回。(文・シモ)
『トゥルーマン・ショー』(1998)
製作国:アメリカ 上映時間:103分 監督:ピーター・ウィアー 脚本:アンドリュー・ニコル 出演者:ジム・キャリー、ローラ・リニー、ノア・エメリッヒ、ナターシャ・マケルホーン、ホランド・テイラー、エド・ハリス 【作品内容】 離島の町シーヘブンで、平凡な保険会社のサラリーマンとして暮らしている男・トゥルーマン(ジム・キャリー)。 彼は、しっかりものの妻とともに平凡な毎日を送っていたかに思えたが、ある時、何かがおかしいことに気づきはじめて…。 【注目ポイント】 本作の独創的なポイントは、なんといっても未来を予見したかのようなメタフィクショナルな構成にある。 ジム・キャリー演じる主人公・トゥルーマンの生活のすべては無数の隠しカメラによって収められ、その様子はテレビの生番組としてリアルタイムでお茶の間に届けられている。 セットはすべて作りもの、トゥルーマンの幼馴染み、近所の人はすべて役者。ただ一人、役者ではないのはトゥルーマンのみで、自分がリアリティ番組の主役として全世界に生中継されていることを知らないというシチュエーションなのである。 主人公の生活を24時間密着して追い続ける様子は、現代では、自分自身の日常を多少の演出を交えて流すYoutube配信のようなメディアを想起させる。ちなみにYouTubeが立ち上がったのは、本作が公開した7年後の2005年である。 また、あるシーンでは、トゥルーマンの親友役の男が「これこそビール!」とカメラ目線でビールを掲げてわざとらしい笑みを浮かべる。また、別のシーンでは、テレビで「トゥルーマンが愛飲するニカラグア産のココア」が紹介されている。 CMがない代わりに番組自体が商品広告を兼ねているというわけだ。また、衣装なども「トゥルーマン通販」で買えるという設定である。これらのシーンはYouTubeのタイアップ広告を先取りしているようだ。 「他人の生活をのぞきたい」という人間の本能を見事に表現した本作の先見性は、今後、資本主義がますます発展し、世界の「広告化」が進むにつれて、増していくに違いない。 (文・シモ)
シモ