信金職員の雑談好き、詐欺食い止める 「枠はみ出しているけど」支店長称賛 尼崎東署が感謝状
来店した高齢女性の特殊詐欺被害を未然に食い止めたとして、兵庫県警尼崎東署は尼崎信用金庫けま支店(同県尼崎市食満7)の職員久代聖司さん(58)に署長感謝状を贈った。久代さんは入り口で客を案内したり、相談に乗ったりするロビーマネジャーを務めており、普段から客と積極的にコミュニケーションを取っていたことが抑止につながった。(地道優樹) 【写真】「友人なのに命令口調で「写真を送れ」 乗っ取られたライン、詐欺見抜いたお手柄コンビニ店員 ■特殊詐欺の電話に女性が頼った先は- 5月7日午後2時ごろ、尼崎市の女性(68)の自宅に「日本年金機構給付部」の職員を名乗る男から電話があった。「年金を二重に受け取っていた」「今日中に申請すれば還付させていただく」と言われ、口座を持っている金融機関を尋ねられた。女性が「尼崎信用金庫」と答えると、男は「後で担当者から連絡させます」と言って電話を切った。 不安に思った女性は、よく利用している近所の尼信けま支店へ。店に入るなり、ロビーに立っていた久代さんの元へ一直線に駆け寄った。「さっきこんな電話があったんやけど…」。事情を聴いた久代さんは「今日中に」というフレーズから詐欺だと確信し、支店長の清水良洋さん(48)に相談。日本年金機構にそのような部署がないことなどを確認した上で、久代さんが最寄りの交番まで女性を連れていった。 久代さんは業務の傍ら、普段からさまざまな客と雑談をしており、女性ともよく世間話をする仲だった。「今日は天気いいね」「最近歯医者行ってん」。女性は用事がなくても、久代さんとしゃべるために店に立ち寄っていたという。特殊詐欺の予兆電話(アポ電)があった日も、真っ先に相談したのが顔見知りの久代さんだった。 「この人しゃべりやすそうやな、と思ったら自分から話しかけるタイプなんです。そのうち支店長から暴走するなって止められるんちゃうかな」と久代さん。ほかの客と阪神タイガースの話題で盛り上がったり、夫婦のけんか話を聞かされたりすることもあるという。感謝状を受け取り、「こんなことになるとは思わなかったけど、最初に頼ってもらえたことは非常にうれしい」とはにかんだ。 隣で見守った清水支店長は「お客さんを案内して終わるのが一般的なロビーマネジャー。久代さんは枠をはみ出してはいるけど、『尼信ファンを増やす』という支店のモットーを体現してくれている頼もしい存在です」と話していた。