円安による輸入物価上昇、基調物価に反映なら政策変更-日銀総裁
(ブルームバーグ): 日本銀行の植田和男総裁は10日、円安進行で輸入物価が大幅に上昇し、基調的物価が2%を超えて上昇するリスクが高まる場合、金融政策の変更も考える必要があるとの見解を示した。衆院財務金融委員会で答弁した。
植田総裁は、円安などで輸入物価が大きく上昇した場合、「それにすぐ反応するということではなく、われわれの見通し以上の賃金・物価の好循環の動き、2%を超えて基調的物価上昇率が上がっていってしまうリスクが上がるところに至れば、金融政策の変更も考えないといけない」と語った。「為替が動いたから、直接的にその対応として金融政策の変更を考えようということでは全くない」とも述べた。
日銀は3月の金融政策決定会合で世界で最後のマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げを決定。イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入停止も決めた。大規模緩和からの転換にもかかわらず、円安基調は続き、市場では円安対応への追加利上げ観測もくすぶる。総裁は円安が経済・物価に影響すれば、政策変更の理由になり得ると改めて説明した形だ。
3月会合で政策を変更した背景に関しては、直前に公表された春闘の第1回回答集計が「思った以上に強かった」結果となり、「機は熟したとみた」と説明。企業の賃金・価格設定行動の変化を踏まえ、これまで根強かった賃金と物価が上がりにくいことを前提としたノルム(慣行)は「かなり変わり始めている」との認識も示した。
物価見通しのリスクは、これまでの経済・物価情勢の推移を踏まえて「ダウンサイドリスクの方が低くなり、基調的な物価上昇率が2%に収束していく可能性が高まった」と指摘。一方で「下振れリスクがゼロになったとは考えているわけではない」とも語った。
今後の金融政策運営は、新たなデータや情報を基に、日銀の見通しに沿って物価が動いているかを点検しながら決めていきたいと説明。先行きの金利のパス(道筋)を示すことについては「かえって混乱を引き起こしてしまう恐れもある」と否定的な考えを示した。