伝統的酒造りユネスコ無形文化遺産へ 「価値見直す機会」と喜びの声【長野県飯田市】
文化庁は5日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が、日本酒や焼酎などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告したと発表した。12月にパラグアイで開かれるユネスコ政府委員会で正式決定する見通し。 「伝統的酒造り」はカビの一種であるこうじ菌を使い、コメなどの原料を発酵させる技術。500年以上前の室町時代に技術の原型ができたとされ、杜氏や蔵人と呼ばれる職人が各地の気候風土に合わせ、経験をもとに手作業を洗練させながら多様な酒を生み出してきた。 政府は2021年に伝統的酒造りを国の登録無形文化財に選定。ユネスコには22年に申請した。日本では能楽、歌舞伎、和食、和紙などが無形文化遺産に登録されており、伝統的酒造りが登録されれば23件目となる。 長野県飯田下伊那地域でも関係者から期待する声が聞かれた。 飯田市鼎切石の喜久水酒造(後藤髙一社長)は、1944(昭和19)年に飯田下伊那地域の37の造酒業者が企業合同して設立。飯伊で唯一の日本酒の蔵元として続いている。今年創業80周年を迎え、新ブランド戦略に取り組んでいる。 後藤社長は「日本で受け継がれてきた伝統的な酒造りが文化遺産として認められることはうれしい。酒の需要が減少している中、価値を見直す機会になれば」と喜び、「全国各地で素晴らしい酒が造られており、登録は和食とともに海外への販売を拡大させるチャンスだ」と期待した。 飯田小売酒販組合の木下裕介理事長は「日本のお酒が文化として評価されたことに意義がある。米、水、醸し出す時を大切にしながら各地で個性あふれる酒造りが行われており、ぜひお酒を楽しんでもらい、その土地の魂のようなものを感じてほしい」と話した。