カンボジアの若者に就業チャンスを 若手美容師がボランティアで現地へ
名古屋の若い美容師2人が、社会貢献活動で初めてカンボジアに派遣されます。ストリートチルドレンや人身売買の対象として保護され、なかなか仕事に就けない若者たちに日本の美容技術を教えるためです。11月の出発に向けて、現地での活動を確認する研修が名古屋市内でありました。
ストリートチルドレンらの自立施設で支援10年 なぜカンボジア?
プロジェクトは「ヘンケルジャパン」(東京都品川区)が2008年から社会貢献として続けているカンボジア支援活動「未来をつなぐ夢はさみ」です。 ヘンケルは1876年にドイツの洗剤工場として創業。1920年代からは接着剤製造に乗り出し、69年に世界初のスティックのり「プリット」を開発しました(現在、日本では文具メーカーのプラスが販売)。 以来、さまざまな企業を買収しながらグローバル企業に成長。95年にはヘア・コスメティックブランド「シュワルツコフ」を傘下に収め、日本でもサロン向けシャンプーなどを販売するほか、東京、大阪、名古屋で美容教育アカデミーも運営しています。 この活動は、「日本人美容師のすばらしい技術を輸出する事で社会貢献をしたい」という、シュワルツコフの日本人スタッフの提案でスタートしました。それにしてもなぜカンボジアなのでしょうか? 同社によると、「重視したのは単発で終わることなく、サスティナブルな取り組みをすることでした。ビューティーに対し興味を持ってくれそうな人たちがいて、自立支援や教育に前向きなところを総合的に考えてカンボジアが選ばれました」 活動場所は、NPO法人「国境なき子どもたち(KnK)」がカンボジア・バッタンバン市で運営する自立支援施設「若者の家」。1970年代から20年以上続いた内戦の影響で教育制度が崩壊したカンボジアでは、いまだに人身売買や児童労働が横行し、ストリートチルドレンも少なくありません。 「若者の家」ではそうした経験をした若者たち約150人のために共同生活や職業訓練の場を設け、社会的な自立ができるよう支援しています。その一環としての「夢はさみ」活動で、日本の美容師が継続的に美容技術を教えに来ることになりました。 はさみの使い方から教える「ベーシックコース」と上級の「アドバンスコース」で段階的に指導し、最後まで学んだ参加者には修了証を授与。これまでに参加した延べ303人の若者のうち、4人が小さな美容サロンをオープンして独立。44人が美容関連の職業に就いたそうです。はさみを握ったこともなかった若者が、この事業をきっかけに美容師の道に進んだ例も。数での評価は難しいけれども、そもそもこの職業訓練の目的は、「様々な理由で十分な教育や将来への夢を持てない子どもたちの選択肢を広げる」こと。目的は十分に叶えられていると言えます。 ちなみにカンボジアは国民の7割以上が農業に従事する農業国です。専門職、技術職を必要とする国内産業は低迷したままで、それらの発展はすべて外資系頼みになっているのが現状です。