【影山優佳と日本の魅力を巡る旅へ】 手仕事を感じるぬくもりの印刷 活版印刷を守る佐々木活字店を訪ねて
歴史や文化、そこで生活してきた人たちの息づかいが感じられる場所、その土地の風土が感じられる場所。魅力のある場所には、人を惹きつける“重力(GRAVITY)”があります。 【画像】佐々木勝之さんの説明を聞く、影山さん。アザーカットを含めすべての写真で見る! 俳優の影山優佳さんが、そんな日本全国の思わず引き寄せられるスポットへ足を運び、その驚きや感動をレポートする新連載「NIPPON GRAVITY」。 1回目の行き先は東京都新宿区榎町。金属を鋳造して活字を作り、その活字を組んだ“活版”を用いて印刷する「活版印刷」の手法を今でも守る「佐々木活字店」を訪ねました。
日本でも数少ない金属活字を作る「佐々木活字店」
「活版印刷というのは、簡単にいうと活字を並べた“活字組版”(活版)を使ってする印刷のこと。今ではオフセット印刷という印刷技法が主流ですが、平成の初期までは活版印刷がほとんどでした。活版で直接紙に圧をかけて印刷するので、文字もきれいに出ますし、風合いがそれぞれ異なることもあって、今ではアーティストやデザイナーの方に人気です」 教えてくれたのは「佐々木活字店」の代表取締役、佐々木勝之さん。佐々木活字店の創業は1917年。元々は活字そのものを作る活字店から出発し、昭和50年代から印刷も請け負うようになりました。活字を鋳造できる工房は日本でも数少なく、印刷文化の守り手としても貴重な存在で、700万字を超える活字を所有しているといいます。
活字が出来ていく音で、仕事を感じます
佐々木活字店の2階へ上がるとそこには活字を鋳造する機械がズラリ。その光景に影山さんも思わず声が出ます。活字を作る機械は新しいものでも60年以上前のものであり、今では直せる職人も簡単にはみつかりません。こちらでは、6台ほど稼働させており、その他の機械は何かあった時のための部品交換用に残しているそうです。 「活字の原料は鉛合金。鉛とアンチモンとスズの合金で、熱で溶かして母型といわれる型に流し込み、冷却水で瞬時に冷やして完成させます。同じ文字でもサイズごとにそれぞれ用意しなくてはいけないし、本を作るとかになると膨大な量の活字が必要になる。あらかじめ活字のキープが無いとダメなんですよ」(佐々木さん) 「凄いスピードで活字が出来上がっていくんですね。ドロドロに熱された合金が瞬く間に活字へと鋳造されていく。型にはめられて出来上がる時のガシャン、ガシャンという規則的に奏でられる音がなんだか心地いいです。これが仕事の音なんですね。現代の私たちの日常って音がどんどん無くなっていっているように感じていて、久しぶりにこういう音を聞いて、なんだか癒されます」(影山さん)