日銀〈現状維持〉決定による「長期金利低下、円安、株高」は、“一時的な反応”と分析できるワケ【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
●日銀の現状維持を受け早期出口観測が後退、国内市場は長期金利低下、円安、株高で反応。 ●ただ長期金利低下は米長期金利低下につれた面も、円安は米利下げ期待もありいったん終了か。 ●株高も一時的の可能性、なお出口の際の環境は市場に好ましいはずであり、過度な警戒は不要。
日銀の現状維持を受け早期出口観測が後退、国内市場は長期金利低下、円安、株高で反応
日銀は12月18日、19日に金融政策決定会合を開催し、大方の予想通り、大規模な金融緩和策の現状維持を決め、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)も変更しませんでした。植田和男総裁は19日の記者会見で、「(物価目標達成の)確度は少しずつ高まってきているが、(賃金と物価の好循環を)なお見極めていく必要がある」と述べ、緩和の出口について慎重に判断していく姿勢を示しました。 市場の一部に、日銀は今回、緩和の出口に向け、何らかの布石を打つのではないか、との見方もありましたが、結局、日銀からは明確な手掛かりが示されなかったため、早期の緩和修正観測は、いったん後退したように思われます。実際、日銀会合後の国内市場では、10年国債利回りが低下、ドル円はドル高・円安が進行、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)は上昇、といった反応がみられました。
ただ長期金利低下は米長期金利低下につれた面も、円安は米利下げ期待もありいったん終了か
日本の10年国債利回りは12月20日、一時0.550%と、約5ヵ月ぶりの低水準をつけました。次回2024年1月の会合でのマイナス金利解除は難しいとの思惑が広がり、国債の買い戻しにつながったと推測されます。ただ、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用柔軟化により、国債利回りは市場で形成されやすくなっているため、このところの米10年国債利回りの低下につれた面もあると考えます(図表1)。 ドル円は12月19日、日銀会合の結果を受け、1ドル=142円60銭台近辺から143円70銭台近辺まで一気にドル高・円安が進行しました。その後も、植田総裁の記者会見を経てドル買い・円売りの流れが続き、日本時間の同日20時前には144円90銭台をつけました(図表2)。なお、市場で米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が根強いことを踏まえると、日銀の現状維持を受けた円安が、ここからさらに進む公算は小さいとみています。
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